この憂き世に生き長らえるのは本意ではないが、もしそういうことになったら、今夜ここで眺めた真夜中の月が、さぞ恋しく思いだされることであろうよ。
この歌には、複雑な背景があります。
権力の絶頂期にいた藤原道長に目を患ったことを理由に退位を迫られていました。
先帝一条天皇と道長の娘との間にできた子供を次の天皇に即位させ、道長が摂政として政治権力を一手に握りたかったからです。
そんな時に詠んだ歌で、本当は死んでしまいたいくらいだけど、心ならずも生きながらえてしまったなら、今夜宮中から眺めているこの夜ふけの月が、きっとさぞかし懐かしく思い出されてくることだろうという辛い心情を詠みました。