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住之江の岸に寄せる波の「寄る」という言葉ではないけれど、夜でさえ、夢の中で私のもとへ通う道でさえ、どうしてあなたはこんなに人目を避けて出てきてくれないのでしょうか。
ことば†
- 【住の江の】
- 「住の江」は、摂津国住吉(せっつのくにすみよし=現在の大阪府大阪市住吉区)の海岸のことです。
- 【岸による波】
- 「よる」は「寄せてくる」という意味です。ここまでが「寄る」と同音の「夜」を導きだす序詞になります。
- 【夜さへや】
- 「さへ」は、すでにある事実に、さらに他の事実が加わり、「…までも」という意味になります。「や」は疑問の意味を表す係助詞で、全体で「(昼間ならともかく)夜までも…するのか」という意味です。
- 【夢の通ひ路(ぢ)】
- 「夢の中で女性のもとに通っていく道すがら」という意味です。現実の話ではなく、夢の中での話です。
- 【人目(ひとめ)よくらむ】
- 「人目(ひとめ)」は「他人の見る目」のことです。「よく」は「避ける」という意味の下二段動詞の終止形。「らむ」は原因や理由を推量する助動詞の連体形で、「夜さへや」の係助詞「や」の結びとなります。全体で「他人の目を避けてしまうのだろう」という意味になります。
藤原敏行朝臣