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意味

身のほど知らずと言われるかもしれないが、このつらい悲しみに満ちた世を生きる人々の上に、出家して比叡山に住みはじめた私の墨染の袖をかぶせて、包み込んでやろうと願うのだ。

解説

おほけなく
ク活用の形容詞「おほけなし」の連用形。「おほけなし」は「身分分相応だ・身の程をわきまえない・恐れ多い」の意味。慈円は時の関白の息子で高い身分だったが、謙遜していることを示す。
うき世の民
「うき世」は「憂き世・辛い世の中」の意味。慈円の生きた時代は、保元・平治の乱など戦さが続いていた。「民」は、世間一般の人々。
おほふかな
「おほふ」は、「覆う」で、墨染の衣、すなわち、仏の功徳で覆うこと。この場合は作者が僧なので、仏の功徳によって人民を護り救済を祈ることを指す。「おほふ」は「袖」と縁語。「かな」は、詠嘆の終助詞。よって「(墨染の袖で)覆うことだよ」の意味。
わがたつ杣(そま)に
「杣」は植林した木を切り出す山、つまり「杣山(そまやま)」を示し、ここでは比叡山を指す。よって「私が入り住むこの山で」の意味。この句は、比叡山の根本中堂(こんぽんちゅうどう)を建てるときに最澄(伝教大師)が詠んだ「~我が立つ杣に冥加あらせ給へ(私が入り立つこの杣山に加護をお与えください」という歌をふまえている。
墨染の袖
僧侶の着る墨染めの衣の袖。「墨染」と「住み初め(住みはじめること)」の掛詞で、前の「おほふかな」に続く倒置法を使っている。

作者

前大僧正慈円


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Last-modified: 2023-10-16 (月) 08:54:56