大正十四年の作品につき、著作権消滅ずみ。
序
著者のヨハンナ・スパイリと言ふ婦人は西暦1829年6月12に端西(スイス)のツーリッヒに生まれ、母は詩人として知られた方でした。
1884年、法律家であった夫のスパイリ氏が没した際に小伝が出版されたのが始めで、それ以来主として少年少女の為めに雑誌に筆が執られ。
其の種のものでは当時その右に出るものがなかったそうであります。
『楓』原名ハイジも傑作のひとつで、文学としては多少の批評もありますが、全体が真面目で、新鮮で、無邪気で、子供らしい軽い悲哀と、単純な信仰とが、極めて自然に描かれていて、少年少女の読み物としては得難い書であります。
Doleという方が英語に訳されたのを更に私の拙筆で法語に訳述したのであります。
文章が長たらしい(不明)がありましたので度々省略しましたが、中に出てくる人物の自然な叙述はできるだけそのまま表すように努めました。
つまり英訳をさらに訳したということですね。
細部を端折っているというのは事実らしくて。
実はこの「楓物語」以前に一度翻訳されているのですが、とある方の研究によりますと、その最初の大正八年版と、ズイヨー制作で大ヒットしたTVアニメのハイジは、一部の設定を大きく変えている点を除けば、驚くほど「そのまんま」なんだそうです。