百人一首
由良川の河口の流れが速い瀬戸を漕ぎ渡る船頭が、櫂をなくして行く先も分からずに漂っていく。そんなようにこれからどうなるのか行く末が分からない私の恋の道行きだ。
- 【由良の門(と)】
- 由良は丹後国(現在の京都府宮津市)を流れる由良川の河口です。「門(と)」は、海峡や瀬戸、水流の寄せ引く口の意味で、河口で川と海が出会う潮目で、潮の流れが激しい場所です。
:【舟人】
船頭さんのことです。
- 【かぢをたえ】
- 「かぢ」は、櫓(ろ)や櫂(かい)のように舟を操る道具のことで、船の方向を変える現在の「舵(かじ)」とは異なります。「たえ」は下二段活用動詞「絶ゆ」の連用形で、「なくなる」という意味です。ここまでが序詞になります。
- 【行くへも知らぬ】
- 上の句の流される舟の情景と、下の恋の道に迷う部分との両方に意味がまたがる言葉です。「行く末が分からない」という意味になります。
- 【恋の道かな】
- 「道」は、これからの恋のなりゆきを意味します。「門(と)」や「渡る」「舟人」「かぢ」「行くへ」「道」はすべて縁語です。
曾禰好忠