九つの峠道ツアー

道筋全景

(青梅街道・成木街道)→吹上峠(新吹上トンネル)→小沢峠→山伏峠→R299正丸峠・秩父側出口→R299志賀坂峠→十石峠→(R141)→(長野県道93号)→田口峠→群馬県道45号→旧道・塩之沢隧道(峠)→(R299)→(R462)→群馬県道71号→土坂峠→帰宅へ

今回のテーマ

 とにかく峠道で遊ぼうというツアー。十石峠ではほとんど全線を群馬側から動画撮影もしてみました。

道程

出発

 目覚めたのが少し遅かった。理由は実に個人的なもので、自作小説の区切りが近づいているためだった。いつものお勤めは土曜日に済ませてしまっているので、とりあえず今日は何も考えずに走り回ればよい。

 既に交通は朝の装いだったが連休最終日という事か、青梅街道が意外に空いてるようだった。これで青梅に向かう。いや実際、混んでさえなければ都心からの脱出には便利です、青梅街道。混んでしまうと最悪なんですけどね。

吹上峠

 併走していた深緑の旧車(形としてはメルセデスSSKのようなタイプだがセブンとは顔つきも中身も違う。残念だが詳しくないので不明。右ハンドルなので英国製造かなとも思ったが)に萌えていたら不覚にも道を間違えてしまった。だが成木街道には無事に入れたようなので、そのまま進む事にする。

 少し走ると、以前正丸峠ツアーで左折した交差点に右から侵入する形になった。もちろん直進、これでコース補正は完了。

 吹上隧道に立ち寄ろうかと一瞬考えたが、時間帯が遅いせいか先客がたくさんいる。こんな汚い歩道トンネルにどうしてと思うのだが、実は吹上隧道はいわゆる化けトンとして有名なのだ。たぶん旧御坂隧道と同様、綺麗に整備されてない古いトンネルに化けトンの噂はつきものなのだろう。個人的にはもっと、おどろおどろして逃げ出したいようなトンネルはいくらでもあるのだけど、近場で行きやすいトンネルって事でもあるんだろうなぁ。

 とりあえず新トンネルを通過、出たところで右折した。

小沢峠・山伏峠~R299正丸峠秩父側出口

 土地勘のない方のために説明すると、このルートは八王子・青梅方面から秩父への抜け道のひとつである。最後まで抜けるとR299の正丸トンネル・秩父側出口の横に到達する。正丸峠部分はR299の旧道でもあるようだ。

 だがうちのサイトでは基本的に写真を載せていない。理由は簡単で、この道は複数の古い峠の組み合わせであり最狭区間は今のレベルでは険道に近いからだ。それに深夜や早朝ならR299の交通量がゼロに近くなるので、そんな時なら飯能に出てR299を使った方が道がいい分だけ早いと思う。ゆえにあくまでここは「抜け道」と考えている。なかなかいい雰囲気なんだけどね。

 未走破だった旧道分岐を旧正丸峠でなくR299現道方向に向かう。これでこの区画の走破はほとんど完了。

志賀坂(しがさか)

 秩父の街で給油しようと思ったのだが、実は秩父市内のR299沿線にはあまりスタンドがない。セルフのところにしたかったのだが進行方向右側にしか見つけられず、まだ燃料保つよなと無謀に考え、そのまま志賀坂峠に向かう。

 なお一般的には、残り燃料で50km走れるかどうか不透明な状況での人里はなれた峠越えは危険だと思うので、この選択肢はおすすめしない。それでも私がここを選んだのは唯一、志賀坂峠の向こうにセルフのスタンドがたくさんある区画が存在する事を知っていたからにすぎないが、これだって「今までの来訪時に空いていたのだから今回も大丈夫だろう」というユルい感覚にすぎないのだから。

 志賀坂峠は、単なる移動の際には「またここ越えるのか……」と嘆きたくなるくらいに本格的なつづら折れの峠道である。また非常に幅員(ふくいん)の狭い区間もあり、有名な十石峠を内包するR299ならではの峠道とも言える。

 だが言うまでもなく、峠越えを楽しみたい人間には悪くない道だ。入門者向けかもしれないが立派な酷道だし、是非未経験なら十石峠の前座として楽しんでみてほしい。雰囲気も実に素晴らしく、あなたが初心者なら「本当にここは関東なのか」と目を疑うかもしれない。

 なおこの志賀坂峠には分岐がある。ここを利用すると中津川林道やニッチツ鉱山、そして遠く三国峠や大弛峠にも続いている場所であり、その意味でも重要なポイントのひとつといえるだろう。

十石峠

 十石峠は非常に楽しい峠道だ。

 どうして昔の自分はここに来なかったのかと思うが、いやいやそんな事はもちろん自分でもわかっている。あの頃の私は酷道や険道などに全く関心がなかった。ツーリングとは遠くに遊びにいく事だったのだから、移動時間のかかりすぎるこうした道は全く眼中になかった。好きの反対は無関心、なんと的確すぎる言葉だろうか。

 閑話休題。

 途中、ぶどう峠との分岐を少し過ぎたところでカメラを動作させる。十石峠をカメラに収めるためだ。結論から言うとムービーの方は後日のリテイクが必要な結果だが、久しぶりの十石峠は楽しかった。ただし時間帯が昼近かったので、全開走ったのが朝の八時くらいだった事もあり交通量の多さには少し閉口する事になった。

 峠自体はとても有名なので詳しい説明は省く。日本全国にその名を轟かせた極悪酷道峠であるが、簡単に説明すれば 十石峠部分は本来林道区画で、今もそういう道でしかない と言えばわかりやすいだろう。数々の酷道ランキングでも高位に扱われる道であり、かつては「途切れた国道」などの記事で語られた有名な道でもあるが、ある程度場数を踏んでくれば「油断ならないが楽しい道」くらいだと思う。なんといっても交通量はそこそこあるわけで、突然の崩落で道が埋れているような事はそうそうめったに無いからだ。落石だって走行不能になるレベルのものが起きればすぐ撤去される。そういうレベルだ。

 ああもちろんだけど、これは閉鎖期間や台風一過のような特殊事情は除く。しかしこれは山岳道の一般常識なので今さらここで語るべき問題でもないでしょう。荒れた道がどのくらいの時間で整備されるか、それはその道のランクづけや重要度、地理的条件によるわけですが、暴風雨の被害により大規模崩落が起きて復旧に時として数年をかけてしまう、十石峠や安房峠のような道はその分類上でも確かに酷道といえるのでしょう。

 どうか皆さん、お気をつけて。

田口峠

 長野側に十石峠を降りてR141に入る。なんか清里とか見えてるのでもちろん反対方向に舵をとる。しばらく走ると田口峠または県道93号の標識があるので、そちらに入る。(「日本で一番海から遠い場所」でもOK。この観光地は93号から分岐するが、通行止めになっているくらい山の中なんで。ていうか「通行止め」の横に「熊出没注意」の看板がある入口から歩いていく人はあまりいないと思うんだが、そのあたりどうなのよ長野県さん ^^;;

 そして田口峠。長野側からだと隧道を出た目の前に碑があって、本当にいい感じである。

構造的には珍しくもない。だが苔むして渋い!

群馬側に第二、第三と続く。ここは第一。

 しかし覆額に竣工年が書いてあるのは結構珍しいかも。明治隧道とかだといくつか知っているが

このボロけっぷりはたぶん気候の激しさなんだろうな。

いかにもな碑が達成感をくれる。

この先は下りと急カーブだ

もう一度中を写してみる。

中まで草が生えてる

北側は下に溝があるようだ。少し侵食している

 ちなみに峠自体は、十石峠よりちょっと酷くて交通量が少ない分荒れてる程度なんで、十石峠が平気なら問題ないでしょう。ただし油断はしないで。

だいぶ下流の方にあった隧道。短いが渋い

左カーブでいきなり隧道。これは規格上も古いぞ。自動車を前提にしてない時代のものだ。

明治終わりか大正のようにも見えるが

中は短いがいいヤレ具合。

田口峠とその前後の隧道は全く灯火がない。道路状況といい、こりゃ両県ともほとんどやる気ゼロですな XD だがそれがいい。

塩之沢峠

 田口峠を出ると「まっすぐ行けば国道254号だよ~」という標識を随所に見かけるであろう。余程の道路マニアでもなきゃ知らないのかもしれないが、実は国道254号は東京都文京区から松本までドーンと豪気に繋がっているとんでもない国道なんである。もっとも地図で最短距離を求めればR254を使えとなかなか言われない事からもわかるように、国道だから速いってわけじゃないんだけど、だがこういう道路は存在するだけで意味がある。地域的目印になるからだ。

 さて、R299に戻る前に本日のラストポイントである塩之沢峠に向かう。ここは本来「まだ時間があれば行ってみる」予定だった場所で、もしこの時点で問題があればR254にエスケープして帰る予定だった。(なお同様に、R141もエスケープポイントであった)

 塩之沢峠は現在、立派なトンネルで下をぶち抜ける事になっている。もちろん車はみんな向こうに行っちまうわけで、古い峠にわざわざ来るのは、この峠が御荷鉾林道と交差しているのでそっちの好きな奴と、それから地図を見てきた好事家くらいだろう。ちなみに1980年代の私は前者であり、今日の私は後者である。えっちら登っていく。

 下のバイパスに比べると、特に塩之沢峠の北側斜面は全然交通量がないようだ。どのくらいないかというと、二日前の雨で流れ込んだ落ち葉が路面いっぱいに散乱していて轍のひとつも付いてないくらいに全然交通量がない。道自体はそうでもないんだけど、路面には枝やら石ころやら落ち葉やら散らかり放題で、もちろん路肩の方はこの手の道の常として凄まじく苔むしている。危ねえんで、せめて走ろうなんてバカな事は間違っても考えないでください。

 峠について、塩之沢隧道を越える。

高さ制限のバーつきだ。今日はいくつも見たなー

塩之澤隧道と書いてある。読めないけどw

撮り直し。

中は綺麗に覆われている。触ってみたら鉄骨とプレートだった

秩父側坑口。

こっちは苔むしてて読めないww

 出ると、地図の前で迷っているバイクがいた。

 実はGoogleマップのこのへんは間違っている。御荷鉾林道側に隧道があるように書いてあるのだけど、実際に隧道があるのは峠越えの旧県道だ。たぶん地図との矛盾に迷っていたのだと思うけど、こういう時は現地を信用して走ってしまえばいい。ロードマップの地方部分が嘘っぱちなんて事はよくある事なんで、気にしちゃいけないのだ。

 私が出てきた事で決めたらしい。彼は隧道に入っていった。グッドラック。

さぁ、降りるぞ。

 下に降りて新道と合流したところでミッションコンプリートだ。頭の中で『さんぽ』を歌っていたらいつのまにか盛大に大声張り上げていたようで、道端でツーリングマップ見ていたスクーターの兄ちゃんがビクッと反応した。いやごめんよ。最近のツーリング中の私の歌、異様に甲高いはずなんでたぶん驚かせてしまったに違いない。

 さて、いよいよ帰宅に入る。

帰宅へ

 R299に戻り東に向かう。途中、未踏破であるR462の雰囲気のよさに感嘆したりしていたのだけど、県道71号の標識が出たところで、おいらの心のナニかがピクッと反応した。ただちにバイクを止めて地図を確認し、おもむろに右折してその71号に入る。

土坂峠

 短いが、ここもいい峠だ。ごちそうさま XD

お?

なんだかな。

この先に中継所か。ふむふむ

とりあえず記録しておいた

 途中、なんか群馬テレビの中継所とかの入り口があった。入ってみたい衝動にかられたが、こういう時はCLの重さが常識を思い出させる。写真撮影だけで撤退したが、もし私がカブだったら間違いなく突入したに違いない ^^;

 あとはまったりと帰った。

 なお最後、なんか夫婦で暇そうにやってた閑古鳥全開のGSで給油。「なんでえバイクかよ」と言わんばかりの親父と対照的に気さくなおばさんと少し話すが、「今からならばまだ渋滞ぎりぎり間に合うかも」という情報をもらい、さくっと高速で引き上げる事を決意する。いや、当初の予定では青梅までとって返して八王子からのつもりだったんだけど、なんか混みそうな気配は感じていたので、渡りに船だ。

 途中、一部でとうとう逃げ切れずにハマったが、せいぜい10kmくらいの渋滞のみで帰れたのは僥倖だった。

 帰ってから、朝も昼も食べそこねていたのをやっと思い出した。思い出したら地獄の空腹が襲いかかり、仕方ない。少々高いがコンビニでカルナボーラをゲットして温めてもらい、帰ってすぐに机に張り付きこれをもくもくと食べた。

(おわり)