安倍峠


より大きな地図で 安倍峠へ を表示

はじまり

まだ夜中。

 ちょっと事情があり、医師の処方箋をもらって強い薬を飲み始めた。これは期間限定だが非常に強い薬であり禁忌だらけのめんどくさいものだ。運転に関しての注意はされなかったが個人的に危険を感じたので初日の土曜日はパス、身体に悪影響がない事を確認した今日、改めて安倍峠に向かう事にした。
 午前三時のはずが遅れたので山岳区間は高速を使う。中央道が1150円(だったと思う)。無料実験区間を使って富士吉田で降り、R139で西へ。本栖湖のそばでR300に入って身延を目指す。

R52を南下中。もう少し

榧ノ木(かやのき)隧道

 R300交差点から安倍峠に向かうために南下するが、実は少し行きすぎて新榧ノ木トンネルにたどり着いてしまった。このトンネルは旧隧道があるのを知っていたが来訪は次の機会にと思っていたもの。迷わずバイクを回した。

坑口はこんな感じ。

 「かやのきずいどう」と読む。新トンネルを南に抜けるとすぐ右側に北向きのゆるい登りがある。いかにも旧国道ですよという趣きは初見でも「何かある!」と直感できるわかりやすさだろう。その直感に従ってお邪魔すると、新トンネルの入り口の上を通って坑口にたどり着く。

覆額。同じR52の有名な廃隧道にも似てる。

 古びているがきっちりとメンテナンスされている。おそらく非常時の抜け道にも利用できるだろう。覆工が全面にされていて壁面を確認できないが、これはそこそこ古かろう。坑口のデザインや素材のつかい方は戦前、それもかなり古い世代に多いもの。たとえば伊豆の天城山隧道、それとJR御殿場線にいくつか残る煉瓦隧道時代の廃隧道に近いと言えばわかるだろうか。同隧道と地理的に遠くないし、有名な大隧道にデザイン的な影響を受けた普通の隧道という感じもするが、それにしてもこの坑口デザイン全体が気合い入りすぎ。戦前それも個人的には御坂峠などと同じ昭和一桁かその頃じゃないかと推測する。  (隧道データベースで確認した。昭和六年だそうだ。やはりか)

内部はこんな感じ。覆工は金属製。

石垣が隧道より古そうだ。たぶん実際古いのだろう

 結構アレな道なのに地元車両がくる。通過を待って中を通ってみる。うん、いい隧道だ。R20の某所ほどではないがきちんとメンテされている。その様子に満足し、そして元の道に戻る。

安倍峠へ

 いつも思うが、この手の峠は景色も気候もいいのにバイクがまずいない。確率としては今のところなんとゼロ。ただの一度もない。だが自転車はよくくる。

 ぶっちゃけ言えば、ぶっ飛ばしたいロード車のガキには汚い田舎道にすぎず、そして林道マニアにとっては走る価値ない舗装林道という事なんだろう。私自身がそうだったように、バイク乗りという生き物は路面劣化に敏感で、ひどい道だと思ったらその道は二度と通らないし人にも勧めない。もちろん地元ライダーの寄り付くような場所でもない。

 反面、自転車には峠越えの概念がある。冒険ライダーの加曽利氏のようにバイクで峠越えをする人もいるが例外的であり、林道や名所といった付加価値がない限りバイク乗りの多くは「ただの小さな峠」には行かない。ゆえに峠でバイクに出会う確率はものすごく低い。

 だが来ないからといって魅力がないわけではない。ぜひ堪能してほしい。

 さて、バイク問わず残り走行距離に一ミリでも不安があれば満タンにする。休日のこのあたりは休みのGSもあるそうなので、見つけたら速攻で入れておく。R300の分岐付近で探すなら数キロ甲府側に向かえば比較的早く開いているとこがあるはずなので、そこで入れよう。それでも最悪なら甲府方面まで走ればあるが。

 R52から県道808への分岐を探そう。ちょっとわかりにくいが看板がちゃんと出ている。番号を見落とさないようにすれば、入ってしまえば一本道で安倍峠まで連れていってくれる。

 注意すべきは自転車。私はほとんど朝一なので登りの自転車にしか出会わなかったが、午後通りかかれば降下中のひとにも出会うだろう。気をつけてあげてほしい。

安倍峠

奥に登山道あり。

 静かなイメージだが、ひとつ西の山伏峠ほどのわかりやすい景勝地ではない。山の中の狭い小さな峠といった趣きだ。また峠自体に車などを泊められる場所が全くない。車分乗で来るなら、圧倒的な道の悪さゆえに初心者はお勧めしないが山伏のほうがいいと思う。

山梨県側の色々。

たぶんここが峠。舗装も切れ目有

竣工記念の石碑。

静岡側の道標。

なんか読めない

 とはいえ、2000mと喧嘩するような山伏峠と違い、こちらは森も残っており森林浴感いっぱいである。どちらがいいかは好みの別れるところかもしれない。

静岡側の看板だが向きがおかしい

帰宅

 静岡県道29号に向かい、ずるずると降りていく。明らかな林道規格の道をゆっくり降りていくと梅ヶ島温泉に到着、ここから正式に県道で道も若葉マークOK(だが県道29号は要所要所で「これ単体でも充分に険道」という部分も若干あるので要注意)。延々と走れば静岡側の見慣れた風景に出る。

謎のトンネル。 トンネルの名前

 静清バイパスに乗り、富士川を渡り一路・三島〜御殿場ルートを目指す。渋滞や事故の情報を耳にしつつ御殿場までくるが、山中湖に抜けるR138はいつものように連休の大渋滞。そこで山北の旧市街から静岡県道147号で明神峠に抜けて神奈川県に入り、さらに三国峠と山梨県道730号を通って山中湖畔に降りた。

三国峠と富士山

三国峠と富士山2

 むう、車が結構いる。さらに道志街道(R413)に逃げた。

 このまま行くと津久井まで行って町田〜八王子エリアの万年大渋滞に突っ込む事になる。かといって道志村から県道24号で都留市に向かうのは業腹だ。それはまた高速無料区間を使うという事だからだ。嫌いじゃないが、もう少し下道で遊びたい。

 というわけで、厳道峠を越えて中央道・上野原IC方面を目指す事に決定した。またこのルートだと明治時代の隧道である天神隧道も通るし、結構楽しめるのだ。しかも高速代も八王子まででたぶん550円かそこらにしかならないはず。

厳道峠


より大きな地図で 厳道峠 を表示

 道志街道の途中、野原などの集落の近くに左にあがる分岐がある。厳道峠入り口と書いてあるところでもいいし、野原林道から入ってもいい。道路の整備状況からいって野原林道がおすすめだが、むかしの厳道峠上り口も一応は簡易鋪装なので登れない事はない。

 ここは大変山深い。のんびり越えて、そしてまったりと返った。

おまけ