2009/11/21は、何という事もない普通の一日だった。というわけでレポートもまったり。
朝が弱い。だいたい起きて30分は動けないのが私の常道で、頭にも体にも熱い血が巡らず思考も働かないのだ。今日も三時半前に起きたのに活動開始は四時であった。目覚ましを三時にするべきか。
強引に四時に出たが、やはり朝が強引なのはいけない。12kmも走ってから携帯を忘れた事に気づき取りに帰る。
だがこの強引な一時帰宅が、最後の最後で役立つ事になるとは本人もわかっちゃいなかった事でもあった。
いろいろと時間を散財したので、とりあえず八王子までショートカットを図る。同時にエンジンの調子見を行いつつ、道志と富士山としか決めてなかったルートを決めていく。
ああ、やはりいけない。プラグ交換しても治っていないようだ。では燃料の総入れ替えを図ってみようという事で、とりあえず燃料ギリギリまで走る事にする。八王子からバイパスでない国道16号に乗っかり南下にかかり、程なく国道413号、いわゆる道志街道に乗っかる。復活後、一度も道志街道を走りきってなかったので久しぶりにいいだろう。山中湖に出たら富士吉田経由で西側にまわり、未体験の県道71号を経由、反時計まわりで富士山スカイラインにアプローチをかける。計算ではかなり暖かくなっているはずで、凍結も避けられるだろうという目論見もあった。
ふと、紫の小さな神が見えた気がした。
晩秋の道志街道、しかも夜明け直前。信じられないほどに寒く、また霧も出ていたがとりあえず快走。朝いちはもう走らないほうがいいよ>飛ばし屋の皆さん
既に走っている馬鹿がいて苦笑するが、笑えた義理かよと自分でまた苦笑する。まだ積雪などはないが、凍った霧が顔にかなり痛い。陽当たりのないところは氷点下のところもあったと思われる。
山伏峠の頂上にある山伏トンネルを越え、山中湖村へ。寒さいよいよ激しい。出口に近いローソンでは「寒いでしょう、まだ氷点下だからねー」と言われて、やはりかと苦笑する。遠い昔の感覚は少しずつ、少しずつ今の自分に戻りつつあるのだろうか。
太陽が出ると山中湖の霧は急速に晴れていく。だけど湯気は晴れない。これは水温が高く、気温がそこそこ低い証拠なのだから。
寒さにふるえている。だけど人間側は内臓機関を含めるすべてが絶好調。経年変化による疲弊は随所にあるが「さみーw」とにやにや震えている時点で不調うんぬんもあまり意味がないだろう。晴れ渡った空と同じ。何も心配はいらない。
車が少ないのをいい事に、まったりと走り始める。
まだ朝だけあってこのあたりは霧で真っ白だ。視界はひどい所では20m以下にもなったが、凍てつくような冷たい霧ではない。気温が氷点より上であるという事だろう。
ここいらで燃料がそろそろ危険と思うので、見つけたスタンドで適当に給油。おっちゃん「涼しいねー」「はい。今朝に比べたらだいぶマシになりましたが」「あっははは、何日か前はもっと涼しかったよー、丸一日氷点下だったからねえ XD」「うひゃあ XD」おっちゃんパワフルw
さて、この先走る(山梨)県道71号は、北側入り口の20m程度以外は初めての道のはずだ。気を引き締める。携帯と地図で確認しつつ進む。ああここだ。進入。
ツーリングマップル関東甲信越2009によると『北海道のような道』だそうだが、どこがやねんと苦笑する。牧場と緑の中をゆるやかにカーブしつつ走る汚いアスファルトの快走道は確かに内地っぽくないが、こんなちんたらロードは北海道ぽくないと思う。道内の広域農道というのは、もっとアバウトで豪快なものだから。
途中「おお、ここはいいな」というところで写真をとりつつ白糸方面まで順調に進む。
ふと「ここいらへんに住めたらなぁ」と思うが、その考えを次の瞬間に吹き消す。
不可能ではないだろう、と土地を見ながら推測する。土地代も安そうだし。だが支払うべき犠牲がもう折り合わない。
本気でやろうと思ってできない事というのは、この国では決して多くはない。後先考えずにやれば大抵の事は可能である。
だが、そのために支払うものもある。
あなたの得たいもの、代償に失うもの。その両者を天秤 にかけて、それでも得たいなら あなたは是非進むべきだ 。
だが、折り合うかどうか 迷うくらいなら、行かない方 がいいんじゃないかなとも私は思う。
富士宮方面から富士山スカイラインに上がり込むが「10時までは閉鎖」の表示、そして入り口で警官が立ち尽くす。とりあえず水ヶ塚PAにバイクをとめてトイレへ。まだ10時にはだいぶ時間がある。温まらねば。
ここで 「上の方の除雪が追いつかない。明日も崩れるし、24日の閉鎖予定を早めるようだ」 という未確認情報を入手。こりゃ参ったなと唸る。
(注: 2009/11/21帰宅後、 twitterで五合目なう な人がいたので尋ねてみました。どうやら昼には通れた模様ですが、路面凍結でヒヤヒヤものだったらしいです)
とんでもない快晴に浮かぶ富士山。見ると上の方に雪中の道が見える……あれは登山道で車道じゃないよなぁ?とんでもない雪だぞあれ?^^; 昔は下から道をたどるような目線がなかったわけで、当時の自分に悪態をつきつつ目線を泳がせていると、
調子を見ていたエンジンが、いよいよいけない気配を帯びてきた。
混合気が濃すぎるか、エアの入りが悪いのか。放置プレイが長かったし、キャブのフロートに何かが固着しているのかもしれない。プラグは交換しているし、火の具合にもおかしな感じがない。
ここしばらくの走りまくりで、鬱積した肩こりが飲酒で激痛になるようにどこかが調子を崩したのだろう。吸気まわりと思われるが放置はできないと、下山していつものバイク屋に移動を決意した。
途中、足柄峠に行きたいと思ったが頭をふり思いとどまる。移動優先!
時間からして、東京都町田市のバイク屋についたら昼だろう。ついでだからと食事していく事にする。
一休食堂は、かつての国道246号ぞいにあった。現在は旧道となっている谷蛾集落の外れ。今もトラック野郎たちには有名な地のようで、24時間何時いっても大抵トラックが止まっているのが印象深い。
「こんにちは。やってますか」「はい、どうぞ」たまたま外にでていたお婆ちゃんに挨拶され、ではと中に入って食事する。
国道246号は私のバイク人生の原点といってもいいが、はじめてのツーリングの頃からこの店はある。途中休業もあったが、それでも復活、ドライバーも帰ってきた。営業も続いている。なんだかわからないが嬉しい。
がんばれ。うまいカツ丼を食いつつ、まったりと過ごす。
旧道ついでに前々回の探索で見にきた旧安戸隧道(大正二年竣工)を通過し、山北駅の前も通って246に戻る。都夫良野峠(東名高速に同名のトンネルがあるが、元々この地にある古道の峠道です。たぶん鎌倉往還道)や、今もこの地域に残る木造校舎(現用です。神奈川県にもまだ分校があるのだ!)の見物もとりあえずスルー。ヤビツ峠再訪もとりあえず置いといて、まっすぐにバイク屋を目指した。
しかし……今までどうしてみんなスルーしてたんだろう。このエリア、
町田市にある昔馴染みのバイク屋で主機の調子を見てもらう。
とりあえずキャブ調整で復活する。混合気がおかしいのではという予想はどうやら正しく、燃料が濃かったようだ。
「放置が長いので他にも理由があるのかもしれないが、今できるのはこれくらいかな。あとは様子見で」。ありがとうございます。
なるほど、スローで変じゃなくても、吹かせば燃えてない燃料が黒煙になって見えたりするのか……そうだっけ。カブの頃、こういうのは色々やったはずなのになぁ。こんな事も忘れてたんだなぁと少し情けない気分になる。
午後一時過ぎにバイク屋を辞す。このまま帰るには青空が惜しいなぁと空を見上げる。「そういえば、
途中、なんかピカピカのBMWと出会う。オフ仕様でカーナビまでつけてる。こんな時間からどこ行くんだろうと自分の事を棚にあげて思っていたが、どうやら道志街道方面を目指すようだ。あんなデカブツでこんな時間にこんな渋滞路……よくやるなぁ道志行きたいなら1素直に中央高速でくればいいのに。
しかも、牧馬峠に向かう私に釣られて道間違えてるし。うははwww 悪いとは思ったが笑ってしまった。
まったく地図を見る事なく道志街道から神奈川県道518号・藤野津久井線に入り込む。今回のように東から道志街道に進入した場合は右に鋭角カーブの分岐となるが、牧馬峠の車幅規制(牧馬峠は2m越えたら通れない)の警告が出ているのでわかりやすい。背後にBMWがついてくるが、たぶん私に釣られただけだろう。あのピカピカ具合では目指しているのは道志村で、それでも本人にとっては大冒険のはずだからだ。実際すぐ引き返した。
いや、これは嫌味ではない。すり抜けの時から初心者丸出しだったし、むしろカーナビをあてにして牧馬峠まで着いて来られたら私が困っていたところだ。この先の県道は神奈川側も山梨側も 険道 という言葉が実に相応しい道が続き、あの感じではバイクは無事でも人間の方がパニックを起こすかもしれない。実際は全舗装でバイク初心者ですら走りやすい普通の道なのだけどホレ、古い道ってのは現代の道の感覚では有り得ないようなところがあるじゃないですか ^^; このへんの県道は元が相当古いらしく、今なら絶対ありえないような掟やぶりが結構ありますし。
兎にも角にもBMW君は去り、平穏にまったりと牧馬峠を越える。
ここでまた面白いお兄さんに出会う。いきなり牧馬峠に黄色いビートが止まってたんだ。そう、ちょっと前に売られていた軽四のオープンだ。
こんなとこにビート。しかもアベックでもないオタ風兄さんがひとり。この寒いのに防寒着でフルオープン。何やってんのかと思えば、 ビートにカメラをセットしており、車から降りずそこから紅葉写真をとっていた 。面白い事やってんなぁと感心しつつ接近(めっちゃ急峻な下りなので、かなりゆっくりなのです)していると、撮影がすんだようで座席に戻った。
私もずるずると、急峻すぎてすべり止め舗装がなされている藤野側を降りていく。
途中一瞬よくわからなくなるが「ああこっち。間違えた」と少し戻る。わずかな記憶頼りだが正解で、そのまま県道517号に入る。
最後、県道76号に入る。この道は南下すると道志街道に戻り、犬越道で丹沢を越えるがご存知のように大人の事情で犬越道は永年閉鎖されたままである。20年前はモンキーで通ったのだが……ってそんな話は置いといて、ここでさらに西に向かい四日市場上野原線(山梨県道35号)に接続するためには、少し県道76号を北上すればよい。見慣れた分岐が見えて、そこから左後ろに入り込めるはずだ。そこが県道517号の残り区間だが、県道表記がほとんどないので要注意。私は最初の頃、携帯のGPSで確認した。
神奈川県から山梨県への県境を越えると、県道517号は山梨県道35号に変わる。
私のホームページを見た人ならもう気づいていると思うが、道志街道以降の道は、以前の笹子峠ツアーの帰りに走ったあの県道をそのまんま牧馬峠から逆走している。一度通った道を逆走するだけなので迷いにくいと言えばそのとおりだ。まったりと向かう。
山梨県側に入ると、いきなり道が荒れている。
都留市の方には申し訳ないのだけど、富士山の北側周辺の甲斐路はどうも苦手である。22年前に、もちやの受付のお姉さんと話してた時にも出た話題なんだけど、あまりオートバイをよく思っていない風土があるのかもしれないと思う。ハンターカブで通りかかって子供たち(五つかそこらの子たちだが、少なからぬ数)に投石された事もある。こっちはただ通りかかっただけにも関わらずだ。
どこの世界でも子供は正確に大人の姿をコピーする。このへんはだいぶ東だし文化圏も富士周辺とは違うと思うが、先日の密猟と思われた件もある。迂闊な事はしないほうがいい土地だという点ではこのあたりも変わるまい。静かに通過する。
県道本体よりも脇道の集落道の方が太かったりするのもこの道の典型だ。苦笑いしつつ天神隧道の秋山側坑口にたどり着く。
「えっと、石碑があるのは上野原側だっけか」
そんなわけで、さっそく通過して探す。
天神隧道は素彫りの豪快な古隧道だ。竣工は明治43年で、これによって今の秋山方面から、四日市方面にはるばる西走しなくとも甲州街道に出られるようになった。旧雛鶴隧道やその周辺の道などを見るまでもなく、道志街道(国道413号)と甲州街道の間にあるこの谷は南北を山に挟まれた難所であり、地元の喜びは並大抵のものではなかったろう。
それは、県道というより町道、いや林道かという旧規格の35号線県境付近を見ても思うことだ。今は秋山側もただの過疎地だろうに、それでも険しい山道を少しでもよくしようと工事が絶え間ない。いつかこの道が第二の道志街道となる事を願ってやまない。
っといけない、本道に戻ろう。
目指す石碑は、南から天神隧道を抜けると左側にある。右側にある新しめの碑は鳥獣供養の碑(注:このへんは禁猟区ではありません。以前、旧雛鳥隧道の入り口で役場らしい人たちに密猟と間違われました^^;)です。本当の石碑は西側です。風景に馴染み過ぎてて見落とすかもしれませんが。
う~ん。うまく全文読めなかったら、よそのサイトの解説も見せてもらいます。まぁ後で XD
ついでに、以前ちゃんと見てなかった天神隧道のコンクリ巻きたて部分を見ます。
湧水などのあまりない、いい隧道なんですが……巻立ての補強は遠からず必要かもしれません。
この後、まっすぐ上野原に出て帰るつもりが……最後の小冒険が待っていました。
ふと地図を見ると、天神隧道の北側から、湖南団地という住宅地を経由して県境を越え、藤野に入れるようだ。最後は先刻の県道76号に合流。という事はあの橋を渡って相模湖市街に出るのね、ふむふむ。
よし、行ってみよう。とりあえず私道か市道かの区別がつかないので今回は写真なしだが XD
地図を見るとわかると思うが、天神隧道の北口を出てすぐ西に入る道があるが、これは無視。もう少しいくと「これ?大丈夫?」と言いたくなるような、どう見ても工事現場道としか思えないボロ道が左カーブしつつ右に伸びている。これがその謎の道なので、ここから入ろう。
道路はこれ以上なく細いが、団地から出るらしい車がたまに通る。本気でただの生活道なので途中、峠のどん詰まりの90度クランクにいきなり家があって驚くが気にせず通過しよう。住宅地の裏口から入るようなものだ。
ずるずる行くと団地内に出るが、『→藤野』という手書きの看板を出してくれている人がいる。ありがたくみせてもらいそっちに向かうが……って細っ!!
これは凄い。元はかなりの古道だと思うが、広げてあるといっても軽トラサイズだし、ガードレールでなくただの柵でその向こうは急斜面というのも泣かせる、いや哭かせる X(
道はみるみる簡易舗装になっていく。もう舗装やら砂利やらわからないような道。しかし轍がちゃんとしているので車(たぶん軽トラしか通れないと思うが)の通過はあるようだ。ずっと走ると……果樹園の中みたいなところに出る。夏場にくると……いやそれ以前に道の方がひどいありさまかもしれないが、ちょっと見てみたいものだ。
これはなかなか美味しい道を見つけてしまった。また来よう XD
相模湖から国道20号線に出て帰りました。お疲れさまでした。
1.上野原か相模湖で降りればいい。どっちも渋滞にほとんど出会わずに山に入れる