京柱峠

国道439号。高知・徳島県境。非常に美しい峠。

注意点

 この峠は美しいところですが、そこに至る道路はかなりの険路なおかつ酷道です。

 お使いの乗り物の特性や予定を考えて、余裕をもってどちらからアプローチするか決めてみてください。

そもそも

 国道439号線の祖谷渓以東は、少なくとも自走では走った事のない世界だった。それに昔は酷道なんて避けて通っていた(林道でなきゃ国道・高速と両極端)。

 だが復活以降の私は少なくとも「子供の頃、父の運転する車窓から見たような道。あるいは父母が若い頃に車でたどったような道」が日本の道の姿であると考えている。いずれは林道にも再び手を出すのかもしれないが、今は酷道や県道などに手を出し続けるのだろうと思っている。

 そして、かっこいい古い隧道にも!

 とまぁ、そういうわけでこの峠である。

 国道439号、いわゆる与作国道本来の姿である祖谷渓周辺での酷道ぶり、そしてそこから至る峠である。非常に美しい道だが祖谷渓に至るもっと便利で使いよい道が他に作られてしまった今、この区間の酷道っぷりが改善されるまでは未だかなりの時間が必要だろう。

 だが、できれば現時点の峠を見に行ってほしい。行きも帰りも面倒な峠ではあるものの、大変立派で美しい峠だと思う。特に高知県側はよく整備されていて、(途中の集落まわりの0.7~0.8車線かと言いたくなる昭和30年代な超路地区間などを割り引いても)走りやすく、とてもいい場所であると思う。

アプローチ(高知県側から)

 国道32号から分岐して入るが、最初は広そうである。「なんだ楽勝じゃん」と油断していると道は唐突に一車線すらも割り込み0.8~1.0車線くらいの世界になる。片側一車線ではない、もちろん全幅。なんだそりゃと言われそうだが「タイヤ幅は確保されている道」と考えるとわかりやすいだろうか。

 さらにこの日は工事区画があり 「11時まで赤です」「今、10時半なんですけど orz」で30分待った けど、結局私のバイクの他は、そこの工事車両二台だけ。つまり 一時間で通ったのは私ひとりだけ だった ^^;

 だが驚く事はない。そんなの四国の山岳道路ではむしろ普通、当たり前である。かつての舗装率ワースト県をなめちゃいけないのだ。私が子供の頃(昭和後期)ですら、ドライブで山にいくといえば全部砂利道が普通で、舗装されていても全線0.9~1.2車線くらいが当然だった。センターラインがあるのはそもそも山道ではなかった。

 高知県側は峠までほとんど舗装。ただし最上部はご覧のように簡易舗装である。

 しかし整備はいい。高知県側はほとんど峠近くまで人がいるらしく、よく整備されていて落葉すらも散らばってない。

 ちなみに 徳島県側は凄まじく荒れている。峠で分岐する登山道と「どっちが国道?」と迷ったほどに だ。だから徳島の人にこの峠の話をすると、たぶんいい答えはないと思う。

 それは例えれば「原風景」。日本の峠道はかくもあれかし、と言いたげな雰囲気がそこにあります。

 鬱蒼としていた景色は360度のパノラマになり、登山道とも分岐し、茶屋まであります。確かに路面は美しくないが峠付近は広く、バスだって余裕で停まれます。標高の高さもあって風景は大変美しい。紅葉の季節には大変な事になるのでしょうが、それを外せば誰もいない峠でこの絶景を独り占めです。

 しかし、これは……なんて贅沢な景色なんだ!

 誰にも心象風景という奴があります。たとえば、私にも「はじめてのツーリング」の記憶があります。はじめて林道を走り転倒しました。寒さでふるえて年配のSR乗りに防寒を習い、今で言えば険路を延々と走りました。晩秋の晴天に富士山を見て「おお」と叫びました。素晴らしい二十歳の誕生日でした。

 この古い峠も、まさに「峠道の原風景」にふさわしい。地図だけで見て「凄そうだな」と訪れたのですが、これはきっと忘れないでしょう。

 まじで尾根なので、とても綺麗です。ぜひ一度行ってみてください。超おすすめです。