赤良木隧道と高知県道16号線

経路ラインが県道16号。

 高知市民に親しまれた道路、愛宕(あたご)通り。西に高知城を置き、日曜市にも帯屋町(おびやまち)にも交差。電車通りにも通じている。

 現在、高知市は高知駅を中心に虚しい観光開発を続けているが、 駅前から50cc以外のバイクを全排除してしまった(二輪車用の駐輪場がないんですよ。新しい駅) 事からもわかるように、目線が「金を落とす客」にまっすぐ向けられているのは疑問の余地など全くないだろう。そんな空々しい「お金儲けのために飾られた高知」を市民が求めてないのは当然の事だが……まぁそれは本題とは関係ない。高知市を龍馬市なんてフザケた名前に改名しようとした上から目線のバカとか、そういう奴らは「足が地についた高知本来の古い道」には当然見向きもしない。

 とにかく、愛宕通りは大昔からそこにあった。宝石を売ってガラス玉を買うようなバカな真似をしなくとも、それはずっとそこにあった。

 それはご城下からまっすぐ北に伸び、正蓮寺の登りをあがったところで各所に向かう古道にさらに分岐している高知市の裏玄関だ。自身は小さな集落をいくつも越え、国道439号のような紆余曲折の果てに、高知市民なら学校で一度は習った有名な工石山(くいしやま)、そこにある赤良木(あからぎ)峠の隧道を越えて本山村に至る。そこには有名な早明浦ダムがあり、国道439号を経由して県内の東西、果ては愛媛・徳島・香川にもスムーズに接続する事ができる。

 途中に狭いところはあるが、コンパクトで扱いのよい二輪車なら一時間もまったり走れば本山に出られる。しかも紅葉シーズン以外の交通量なんてゼロも同然。最初の市内の登りがその昔、ローリング族の遊び場になったとか、途中の脇道に車でシケ込むカップルがいたとか、なにげに眺めがいいのでラブホもあるとか色々あるんだが、それも峠をひとつ越えるまでの話。最初の椎野峠を越えて山岳ルートに入ると、もう誰もいない。

 そしてラスト。一番最後、工石山の赤良木隧道である。

赤良木隧道

昭和38年竣工。総延長572m。

 寒風山隧道などに近い年代だが、こちらの方が構造的に新しく見える。おそらく前者は昭和30年代前半までの作りで、このあたりの高度成長でトンネル技術も変わったんじゃないかと推測される。あるいは寒風山は僻地すぎて最新の技術が使えなかったのか。どちらにしろ興味深い。

 晴れた日の朝など、本山側で霧が出ている事がある。バイクで走るとわかるが隧道の南坑口と北坑口で、高知市の南国っぽい暑さから、高知県嶺北(れいほく)地域の冷たい気候にガラリと様相が変わるせいだ。高知側からいく時は、一枚上着を重ねるハメになるかもしれないし、本山村まで出ると、秋ならもう薪を焚く匂いがどこからか感じられるかもしれない。

 高知市から移動すると、途中の439っぽい酷道ぶりといいこの風景といい、激しく旅情をかきたてられるだろう。

 そしてあなたが地元民なら「勘弁して。ひでえ田舎」と思うだろう。かように、住民と旅人の視線とは残念ながら異なるものである。

追記

 はりまや地下駐車場 には自動二輪車も止められるみたいですね。

 やはり駅前からは全排除か。やる事がキモいなぁ。