せっかくクルマをゲットしたのだからドライブに行こう、という話になった。
「さて、どこ行くかなぁ。思いっきり突発だしなぁ」
これが内地ならどうにでもなる。予定は未定でただ走ればいい。
だけど冬の北海道、しかもメイドロボにミニマルチまでお供となるとそうはいかない。充電はどこでするか等いろいろとリアルな問題があるし、夏場のように気楽に動くわけにもいかないのだ。
経験上、ひとりなら車中泊も可能ではある。このクルマならぎりぎり寝られるだろうし。
だけど、
「それは却下です」
「そりゃそうだろうね。君やこの子の居場所がないし」
背中に這いあがろうとするミニマルチの首根っこを掴み、テーブルの上に載せた。
なんかこの子、背中に這い上がる癖がついているようだ。きっと前の持ち主がさんざんリクエストしたせいなんだろうな。今もそうで、テーブルに載せてやるとしばらくボーっとした後、こちらを確認してごそごそとテーブルを降りて、
で、背中に回って這いあがろうとして俺にテーブルに戻される。これをさっきから延々繰り返しているのだ。
そんなミニマルチが気になるんだろう。セリオは俺の背中をじっと見ていたんだが、
「いえ、それについては問題ありません。私たちならば車中泊でも問題はないのです。充電については走行中と寝る前にいくばくかの時間をいただければエンジンの発電分からいただく事もできます。燃料消費量が増えパワーも低下しますが、宿泊するのに比べれば安価ですし、移動中特に私はほとんど動きませんから電力消費量も多くはありませんので。……むしろ問題は大将かと」
「え、俺?」
「はい」
またまた俺の背中に登ろうとするミニマルチだったが、
「だめです」
「ありゃ」
セリオはそんなミニマルチをむんずと掴むと自分の懐に入れてしまった。「みーみー」とミニマルチが泣きだすが、離すつもりはないようだ。
「セリオ。いいじゃんそれくらい」
「いえ、問題行動は是正するべきです。運転中にもやられると困りますので」
「まぁ確かにそうだけどな」
本当にそれだけか?まぁいいけど。
「話を戻しますが、低温下で車中泊というのは大将にとって問題があります」
「俺?雪山仕様の寝袋あるから平気だけど?」
これは嘘ではない。いささか古いが、前に道内にいた時に車中泊に使ってた奴だ。マイナス15度のクッチャロ湖くらいなら平気だったぞ。
「そういう問題ではありません。雪に閉じ込められる危険もありますし一酸化炭素中毒による死亡の可能性も否定できません。それに」
「それに?」
セリオは一瞬だけためると、少し首をかしげた。
「申し訳ありませんが……大将の肩こりが悪化しますので」
「うわぁ、それ嬉しくねえぞセリオ!」
年寄りかよ俺!
「若い頃にあちこち旅されたのは承知しています。ですが当時とは体力も耐久力も低下しているのを計算に入れなくてはなりません。もう若くないんですよ大将?」
「いちいち顔覗き込んで言うなぁっ!!」
……しくしくしく。