カタチ(1)

 我が子の決定的な異常に気づいたのは、皮肉にも家族が集まった日だった。

 いや、異常だと気づいたのは私だけだったのかもしれない。実際には何も異常ではなかったのだろう。ただ私がそれを許容できなかった、過ぎてみればただ、それだけの話だったのだろう。


「こんにちはお兄ちゃん。(まれに)です」

「……」

「お兄ちゃん?」

「あ、ああごめん」

 義妹を前にした息子は、ぎごちなく返事をした。

 娘の方はというと、義兄に対してそつなく接しているようだった。良くも悪くも普通に初対面という感じだ。本来好奇心の強い子供という年代のことを考慮すると、やはり息子同様にどこかぎごちないのだろう、そんな事を私は考えた。

 それでも娘の方は一応、円滑な対応をしようと試みているようだ。しゃんとしろ息子。

「えっとね、希の名前は『きぼう』からとったんだって。ずっとしあわせにくらしてねって、そういう意味なんだって」

「なるほど」

 よく聞かれるだろうことを娘は先に答えた。

 思えば(まれに)という名前は珍しく夫の望んだ名前だった。夫は前の奥さんを病気でなくしていたし私は再婚。私の名が(のぞみ)であることから、ふたりあわせて『希望』になるというのを夫は主張した。

 縁起がいいとも悪いとも言えそうな微妙な組合せに私は苦笑したものだ。

「こんにちは泰介君。お父さんの葬式以来だね」

「どうもです」

 夫も挨拶する。そういえば葬式の時が初対面だったわね。義理とはいえ 『息子』の存在に夫は期待全開だった。男同士ということで、いい関係を作りたいと子供のように嬉しそうに話していた記憶が脳裏をよぎる。

 男はいくつになっても男の子、そんな言葉がふと浮かんだ。

「なんかすみません。わざわざ仕事まで休んでくださったみたいで」

「なぁに。(のぞみ)……その、君の母さんの希望でもあるしね。家族みんなで君を一員として迎えたいとね。

 聞けば君はオートバイが趣味だそうだね。私も昔は乗っていたが、今はもっぱら車でね。興味もあったんだよ」

 こら、そこで人をダシにするなと内心苦笑したのだが……。

「そうですか」

 会話が終わってしまった。

 息子はオートバイを話題にされたくないようだった。オートバイ好きの前夫の息子とは思えない反応だった。もしかしたら、あまり本人は好きではなかったのだろうか?

 それとも、今はオートバイよりあのロボットの方が……?

 そんなことを考えていたその時、

「お食事をお持ちしました」

 そんな声とともに、HM-12が部屋に入ってきた。


 一瞬、何が起きているのかわからなかった。

 うちにはHM-12がいる。家庭を仕切っているのは私なのだが、共働きであるため娘の世話をしたり昼間の管理をする者がいる。そのため私がいない時は代役としてHM-12を稼働させている。会社の勧めで購入したものだった。

 だから当然、私がいる時は『引継ぎ』以外の用途で稼働させる必要はないし、稼働させたこともなかったはずだ。

 なのに、どうしてこれが食事を運んでくる?

「ちょっと希。ママがいる時はロボットは止めておきなさいって言ったでしょう?どうして動かしてるの?」

「知らない。希はお部屋に入っててって言ったもん」

 希がぷうっとふくれた。子供か!……って子供か。

 落ち着け、落ち着け私。

「申し訳ありません。これは私の独断でございます。お嬢さまの命令ではございません。お嬢さま、お気を悪くされたようで申し訳ございません」

「え?う、うん、いいよ希は。でもどうして?」

 希の問いかけに、よどみなくHM-12は答えた。

 このHM-12は希のお気に入りだ。まるでもうひとりの自分であるかのように希はHM-12に接する。教育上悪いことこのうえないが、まだ希は決してひとりで居ていい年齢ではないから、どうしても昼間はHM-12を置いておく必要がある。

 仕方のないこと。それはわかっている。

 だが、こうして目の前で語らっている姿はやはり不愉快極まりない。

「本来、奥さまがおられる時は私は休息に入るお約束です。それはもちろん承知しております。ですがせっかく皆様揃われての団欒です。裏方などは私にお任せいただければと思いまして」

 むか。なんで命令もしないのに私にまで答えるのよ。しかも意見してるし!

「道具が意見すんじゃないの、黙りなさい」

「はい、申し訳ございません」

 そんな命令はしていない。

「謝れなんて命令してないでしょ?命令よ、黙れ!」

「……」

 HM-12は静かに頭をさげた。

 いったい、これはどういうことなんだろう。

 うちの職場にもHM-12はいる。HM-12は家庭用がメインだからあまり多くはないが、それでも少なからず稼働している。HM-13に比べると少々頭が悪いのはどうしようもないが、いったん覚えた仕事を淡々とこなすさまは決して無能ではない。それどころか定型業務には欠かせない存在と化している。

 だが、彼らにはこんな不快感は抱かないし、彼らもこんな反応はしない。学習の結果でしゃばるようになる機体もあるけど、業務命令に絶対服従という範疇を越えてくることは絶対にない、と思う。

 まぁ、徹夜仕事をしたりする一部の面々には違う意見があるのかもしれないが。

 だが、娘と相対しているHM-12は明らかに何か違う。応対がどこか柔かいし、まるで人間の召使いのようですらある。

 それは、息子の背後にいるあのHM-13にもどこか似ているような……?

 なぜ?

「どういうこと?なんで勝手に動いてるの?希、あんた本当にちゃんと命令したの?」

「言ったよぉ」

「どういうことかしら?故障?」

 家庭に長くいて応対していると、特有の不具合が何か起きるんだろうか?そう思った。

 ──そう。

 私はあえてその時、あるひとつの可能性から目を背けていた。

 と、そんな時だった。

「母さん、悪いけど黙ってくれるかな」

「え?」

 息子が私を無視するように立ち上がるとHM-12の前に移動した。そしてHM-12をじっとみつめた。

 優しげな笑顔。

 どうしてこの子は、こんな穏やかな目をするのだろう。相手は機械だというのに。

「頭をあげてくれる?あと、しゃべってもいいから」

「……はい」

 驚いたことに、HM-12は少しだけ躊躇するかのように反応すると、ゆっくりと顔をあげた。

 ちょっと待ちなさい、主人のわたしが黙れといったのにどうして声を出すの?

 だが、息子の応対はそんな私をも愕然とさせた。

「僕がきたことで余計な厄介をかけたみたいだね。悪かった」

 ……はい?

 あんた馬鹿?機械相手になに謝ってるの?そもそも「余計な厄介」なんて抽象的概念がHM-12相手に通用するわけないでしょ?HM-13だってそんな柔軟な理解力ないわよ?

 私は苦笑しようとした。だけど次の瞬間、

「とんでもございません。御迷惑をおかけしてしまいました」

 えぇ!?通じてる!?しかも謝り返してる!?「もうしわけなさそう」に!?

 うんうんと息子は頷き、HM-12の肩を叩いた。

「気持ちはすごく嬉しいけど、母さんがロボット嫌いなの知ってるよね?来客の僕のためにあえて頑張ってくれるのはありがたいけど、そのために母さんが不愉快になってしまってはあまり意味がないと思う。

 わざわざ起きてきてくれたところ追い返すみたいで悪いけど、今日のところは母さんの顔をたてて引き下がってくれないか?」

「……」

 HM-12は少しだけ息子の顔を見て、私たちをぐるりと見回した。

 そして一歩さがると丁寧に、しずしずと一礼をした。

「大変失礼いたしました。休息に戻らせていただきます。御用の際にはお呼びくださいませ」

「うん、よろしくね」

「はい、タイスケ様」

 そう答えるとHM-12は部屋を出ていった。

「……」

「……」

「……」

 ……な、なんなの?これ?

 HM-12にあんな応対が可能だとは知らなかった。会社のHM-12ではまずお目にかかれない光景だ。そもそも、あれほどの柔軟な応対ができるんなら通常事務にHM-13なんか不要じゃない。

 それとも、息子は何かハッカーじみた魔術でHM-12の、いやメイドロボのそういう『ツボ』を心得ているとでもいうんだろうか?

「……タイスケ、あんたロボットの扱い妙にうまいわね」

「そりゃまぁ、うちにはせりながいるし」

「せりな?」

「ロボットの事よコウジさん」

 夫は息子のHM-13の名を知らない。まぁそうか。機械相手に自己紹介なんかするわけがないもの。

「そうか。ところでロボットに泰介くんの名を教えたのは君かい?」

「まさか。希、あんた教えた?」

「……!え、な、なにお母さん?聞いてなかった」

「ふむ……あぁそうか。私たちの会話を聞いてたのかな」

「やだ、やめて頂戴。機械が立ち聞きなんて気持ち悪い」

 冗談ではない。そんなことがあってたまるものか。

 ……だけど。

「どうしたんだい?」

「……」

 夫が声をかけてくれるのにも気づかず、私は考え込んでしまっていた。


 深夜になり、皆は寝静まった。

 私と一緒に寝ないかという提案を息子は断った。どうしてと訊こうと思ったのだけど、二階の客間でのんびり外の景色を見たいからだという。町のどまんなかに住む息子にとり、郊外のうちの周囲の景色は非常にお気に召したらしい。

 変な時間に起きたり寝たりすると思うから、一緒に寝ると翌日の私の仕事に差し支えるといわれれば、確かに息子の言う通りではあった。気恥ずかしさもあるのかもしれないが。

 妙なところに気の回る息子。だが嫌な気分ではなかったし、背後で感心するように「ほぉ」と言う夫の声に誇らしい気持ちもあった。

 いろいろ問題はあるが、やっぱり私の息子は本当にいい子だ。

「ねえコウジさん」

「ん?」

 寝床の中。夫婦の闇の中でわたしは夫に相談した。例のHM-13のことを。

 夫は闇の中であからさまに渋い顔をしていた。それはそうだろう。親子だから問題ないと言いたいところだけど、実の親子とはいえ戸籍が別になっている以上息子の所有物を勝手に処分すればそれは犯罪スレスレの行為である。事情を話せば現場の警官はわかってくれると思うが、少なくとも犯罪に抵触していることは言うまでもない。

「それは最後の手段としてだね、もういちど泰介くんと話し合うべきじゃないか?」

「話合いなら何度もしたわよ」

 夫がなくなった時も、そして、今回の来訪の前も。そして先刻にも。HM-13を処分しろなんて言ったわけではないが、一緒に暮らそうという事はつまりそういう事だ。少なくとも息子はそれをずばり理解しているのが私にはよくわかっていた。

 立派とはいえないけど私も母親だ。息子のそんな顔くらいは読めた。

 しばらく夫は沈黙していたが、やがて口を開いた。

「では僕からも提案しよう」

「ええ」

「その場合、君は絶対に表に出るな。出ちゃいかん」

「……え?」

 夫の言葉に、私はまじまじと彼の顔を見た。

「目撃者がどうの法的問題がどうのと言っているわけじゃない。それ以前の問題だよ。君は泰介くんに、自分が実行犯の黒幕である事を絶対に悟られてはならない」

「どうしてかしら?」

「わからないのか?まったく、君らしくもないな」

 困ったように夫は笑った。

(まれに)がモーニカ……うちのHM-12を宝物にしているのは知ってるね?君はそれをあまり気に入っていないようだが」

「ええ、まぁね」

「だが、泰介君のHM-13への思い入れはたぶん(まれに)の比じゃないぞ。葬式の時といい、さっきのHM-12への態度の柔らかさといい、彼は明らかにメイドロボというものに対して非常に好意的だ。君がメイドロボに対して抱く嫌悪感とは正反対のものを、たぶん彼はメイドロボたち全般に対して持っているんだと思う。

 うちのHM-12の態度が違ったのもそのせいだろう。あれは泰介君を『自分たちを友人と見てくれる者』だと認定したんだなきっと」

「……は?」

 いきなり妙なことを言い出す夫に、私は思わず聞き返した。

「コウジさん大丈夫?相手は機械なのよ?」

 だけど、そう聞いたら夫は本当に意外そうな顔をした。

「君は知らないのか?……へえ。マスコミ関係で仕事するメイドロボだと事情が違うのかな」

「なに?どういうこと?」

 ふむ、と夫は頷いた。

「さっきのと似たようなケースを知っているということさ。

 知ってのとおりうちの職場は男所帯で女性がいない。でもHM-12が一体いるんだ。うちのよりだいぶ前の型なんだけどね。

 で、そのHM-12なんだが……泰介君に対するのと同じような応対を年配の社員相手にはするんだよ。その社員はほとんど窓際に近いおじさんで社内の雑務をしているんだけど、なんでも亡くなった娘さんを思い出すとかで、もう凄いかわいがりようなんだ。機械類の手入れや仕事が終わると手元に呼んで、髪を梳いてやったり服を洗濯してきてあげたり。あんまり大切にするんで社長も今じゃ公認しててね、ほとんどその人の娘さん状態なんだ」

「へぇ」

 ちょっとボケた老人の溺愛の対象というわけか。

「面白いのはHM-12の反応さ。最初は四角四面に『ありがとうございました』なんて言ってただけだったんだが……ああいうのも学習なのかね。今じゃ『おじいちゃん』『なんだい』なんて普通に孫と爺さんみたいな会話してるよ。

 普段の態度も信じられないくらい柔らかくてね、お茶くみとかする時にお客さんがよく驚くんだ。あのHM-12は特別仕様ですかってね。まるっきり普通の女子社員みたいだからね」

「ふうん」

 なるほど、個人的に大切にされるとそういう応対をするわけか。なんていうか、いやらしいというか、あざとい設計ねえ。

 ふむ、そう言われれば息子とHM-13の関係もそういうものっぽいわね。

 だけど、たかがロボットに『普通の女子社員と変わらない』なんて評価されたら、そんな職場に本物の女性社員は絶対根付かないわね。ま、男職場だから許される暴言なのかもしれない。

 夫の話は続く。

「うちの職場じゃもう、そのHM-12は女子社員として扱ってるよ。個人的に妙な顔する奴も当初いたけど、結局仕事してるとそれが自然なんだ。

 聞いたら、お得意さんとこでも似たようなケースがあったよ。小さい会社が多いけどね、HM-12もHM-13も普通に馴染んでる。それどころか女性社員に普通に馴染んでるケースもあるそうだよ。最初はお茶くみみたいな単調作業を全部押しつけてパシリ状態だったらしいんだけど、ロボット慣れした若手の子とか子供と離れて暮らしてるパートのおばさんなんかが突破口になっていくのがパターンらしい」

「……そんなの初耳よ。本当?それ」

 私の職場は一応だがマスコミ系だ。だがそれは初耳だった。

 だが夫は本当だよと言った。

「ただ、成長期の男の子にそれがまずい、という君の主張もわかる。だから僕はそれを止めるつもりはない。あまり派手にやらかして社会的立場がなくなったりしたら僕たちの家庭を脅かすことにもなりかねないから、それだけは勘弁してほしいんだけどね。

 で、最初の話に戻るんだが」

 夫は再び眉をしかめた。

「これは最悪のケースだが……もし泰介君がそのHM-13を『女の子』として認識していたらどうする?君が介在していたことがばれたら大変なことになるぞ」

 はぁ?

「な、なに気持ち悪いこと言ってるのよ!いくらなんでもそんなこと」

「ありえない、と言えるのかい?」

 それは。

「望」

 夫は目を細めて苦笑した。

「女の子はどうか知らないけど、男の子にとっての初恋ってのは大抵身近な異性なんだよ。若い先生とか近所のお姉さんとか、年上または年上に見えるケースである場合も多い。

 HM-12はちょっと子供っぽすぎる外見だけど、HM-13はもともと実在の女子高生がモデルなんだ。おませな男の子の気持ちを惹き付ける対象として、決しておかしくない。

 実際、小さい男の子を弟のように張りつかせたHM-13の光景っていうのは都会じゃたまに目にするそうだし」

 なんだそれは。なんだか随分と女の立場ないわね。

 だけど、そんな私の心の声に気づいているのかいないのか、

「あー、一応いっとくけどこれを女性差別だと言うのは筋違いだと僕は思うよ」

 そんなことを夫は言った。

「昔はその立場に本物の『人間のお姉さん』がいたもんだ。実の姉、近所のお姉さん、学校の若い先生。そういう立場の女性に小さい男の子は接近する機会があったし、一緒に遊んでくれる人もいた。時として悪戯をしかけてきたり喧嘩を売ってくるような子供に対して、苦笑いしながら応対したり時には叱ってくれるようなひともね。僕にもそういう人がいたから、よくわかる。

 でも今はその『人間のお姉さん』がめっきりいなくなった。少子化ってのもそうなんだけど、男女平等のおかげで女性も皆外を飛び回ってる。他人の子供の相手なんかしてられないのさ。

 そんな中、かつてのお姉さんたちのかわりをしているのが彼らメイドロボなんだと思う。

 見てて不愉快かもしれないけど、だからといって子供たちから『となりのお姉さん』を奪えば解決、なんて考えだけはやめてほしいな」

「……知らないわよそんなの」

 なんとなく、ロボットの事とは別の意味で不愉快だった。

「ところでコウジさん、そのコウジさんの『お姉さん』って誰?」

「こら、そういう事を男の子に聞かない」

「なんでよ」

 そも、いい歳こいて『男の子』ってなによあんた。

「なんでもだよ。そういうのは『漢の話』だからね」

「なにそれ気持ち悪い。男ならはっきり言いなさいよ」

「何言ってんだかね。

 男だけの話、女だけの話ってのはあるもんさ。君にだけは、そういう話に踏み込む思慮のないオバハンにはなってほしくないな」

「おあいにくさま。私にそんな思慮はもともとないって」

「やれやれ」

 くすくすと夫は笑うと、

「ま、いい。それより話を戻すよ。

 泰介君のことだけど、くれぐれも彼に気づかれちゃいけないよ。もし僕の予想が外れでなかったら……君はたぶん一生後悔しても足りないほどの思いをする事になるから」

「なによそれ」

 夫はちょっと悲しげに眉をよせて、

「好きな女を目の前で殺されて、その憎しみを忘れる男なんていないってことだよ。君は実の息子の憎悪の対象になりたいのかい?

 特に彼は思春期だ。純粋なだけにその想いがマイナスに向かえば信じられないほど思い詰めることになるぞ。

 最悪の場合、報復に君を殺そうとするかもしれない」

 ……は?

「なに言ってるの?そりゃ怒るし憎むかもしれないけど、殺すって……変なこと言わないでくれる?いくらお気に入りだからってたかがロボットじゃない」

「変なことなもんか。僕は極めて本気だし現実的だと思うよ」

 ふう、と夫は首をふった。

「理解できないのはわからないでもないけど、だけど知識として頭にはいれておいてくれ。そして忘れないでくれ。

 泰介君がそのロボットを『機械』と認識していれば君の言うとおりですむと思う。だが彼が『家族』特に『女性』として認識していた場合、君は彼にとって人殺しであり裏切者でもある。だってそうだろう?自分の母親が自分の大切な存在を殺してしまうんだからね。これ以上の裏切りがどこにある?

 だからこそ君は表に出ちゃいけない。彼に気づかれたら最後、何が起きるかわからないってことを忘れないで。

 僕が言いたいのはそれだけだよ……おやすみ」

 そういって夫は、ふとんをかぶって寝息をたてはじめた。



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