拾い物(4)、または帰結

「……なるほどね。こいつが騒動の元か」

 工場の入っていきなり僕が出会ったのは、小さなミニロボットだった。

 ミニセリオ、というのを覚えているだろうか?

 いつだったか、来栖川がロボットショー向けに製作した、小さなセリオである。子犬くらいの大きさで知能も低いし言葉もしゃべれないが、ひと昔前のロボット以上の活動能力を持つ。現代版のAI○Oみたいなものである。頭身の縮まった、二頭身半というかわいらしいセリオはその愛くるしい立ち振舞とマッチしてすごい話題となり、姉妹機のミニマルチともども、発売が待たれる今話題の一台である。

「みー、みゃー」

「こらこら、騒がないの。悪い奴に見つかったら大変だろ?」

「!」

 ……あらら。怯えちゃったよ。よっぽど怖い目にあったんだな。

「…まぁいい。僕は明仁(あきひと)って言うんだ。君は…って、名乗れるわけないか。」

「…ふみぃ」

「とりあえず、ついておいで。今、僕の友達が悪い奴のとこに行ってるんだ。助太刀しなくちゃね……わかるかな?」

「…みいっ!」

「……まぁいいか。静かについてくるんだよ?あと、何か気づいたら教えてね」

「…みいっ!」

 …わかってんのかなぁ…わかってないんだろうなぁ。

 ミニセリオをお供に、薄暗い工場の廊下を歩く。

 芹緒なら平気だろうけど、残念ながら僕の認識能力では無理がある。ミニセリオは見えてるみたいだが基本的に僕から離れないため、何の役にもたってくれない。…ってまぁ、ようするに動くぬいぐるみみたいなもんだから仕方ないんだけどね。

 それにしても、どうしてミニセリオがここにいるんだろう?

 芹緒が認識した相手は、これじゃないだろう。この子も何かから逃げてるようだし、おそらく芹緒が追ってる相手はそれに違いない。それはいい。でも理由は何だ?ミニセリオはいわば、ハイテクおもちゃの試作品みたいなものだ。なぜこの子を追わなくちゃならない?

「制御室は…っと、あぁ、こっちか」


 制御室には、電源が入ってないのか暗かった。

「やれやれ、暗いなぁ…灯りはどこだ?」

「に?」

「あぁ、そこか……ってあれ?ミニマルチまでいたのか」

「に?に?…に〜!」

「みゃ、みゃ、みゃあ!」

「こ、こらこら、感動の再会はいいけど騒ぐなって……はぁ」

 なんだかなぁ。よくわからん展開になったきたぞ。

 まぁいい。電源はどこだ?えーと…!あぁこれか。ドアの影になっててわかんなかったぞ。

「よし、入れるぞ。…きみら、ちょーっと眩しいかもしれんが我慢してくれよぉ〜」

 …だが、僕はその言葉を最後まで続けられなかった。

 スイッチに触れた途端、僕は激しいショックを食らってしまった。感電だ、と意識のどこかが囁いたが次の瞬間、僕の身体は火花をあげ、床に叩きつけられた。

「ぎゃあああっ!…ぐ、ぐえっ!…げほっ!」

 身体の中を無数の毛虫でもみくちゃにされるような、物凄い不快感が這いまわっていた。両脚と左手は全く動かない。右手も感電の衝撃か痺れている。左肩と腰の奥深くが灼けて熱い。

「くそぉ……やられた…」

「みぃ!みぃっ!」

「にゃあ〜」

「…あ、あぁ、さ、触るなよ、ふ、二人、とも。ショート…げほっ!…したら、危ない、から、な」

 ていうか、そんなショート起こしたら僕は死んじまうだろうけど。

「みぃ…」

「…そうか、それで…懐いてたのか。そうだよ。…僕の身体、半分がた、機械、だ」

 それはつまり、メイドロボ技術のおかげだった。

 一家全員が巻き込まれた高速の事故。生き残ったのは僕だけだったんだけど、その僕にしても、左手と両脚のほとんどは潰されて原型もなかった。乗ってた車はぺしゃんこだったわけだから、頭や胴体があり、なおかつ生き延びただけでも奇跡と言えば奇跡だ。

 …もっとも、それで僕はひとりぼっちになっちまったんだ。

 親戚にしばらく厄介になっていたんだけど、保険と補助で義手と義足ができて、僕はその家を出た。腫物に触るような扱いは僕も嫌だったし、あまり迷惑もかけたくなかった。幸いにも今の義手義足は日常生活には全く問題ないし社会保障も受けられた。だから、ひとり暮らしも可能だった。つまりはそういう事だ。

「…まいったな。これじゃあ…ふう。本当に足でまといだ。」

 これじゃあ、歩くどころか動く事もできない。ついでに気分は最悪、今にも吐きそうだ。まだショックで痺れてるから痛くはないけど、時間がたてば激痛でもうどうにもならなくなるのは間違いないし…こりゃお荷物以外の何者でもない。

「…はぁ。」

 なすすべもなく、天井を見上げる。

 言うまでもないけど…スイッチにあんな漏電が自然にあるとは考えにくい。間違いなく、芹緒の追ってる奴、この子たちを追ってる奴の仕業だろう。ノンちゃんの指摘は正しかったわけだ。

 僕は、甘かった。

 もっと危機感を持たなくちゃいけなかったんだ。今更悔やんでももう遅いけど、それでもそれは悔しかった。僕は歯軋りした。

 …あ、意識がぼんやりしてきた。

 …まずいな。もしかして……このまま死ぬのかな、僕。

 …天井がぐるぐる回ってる。誰かが呼んでるような気がする。

 …母さん…父さん……姉さん。

 …なんか…僕ももう…そっちへ行きそう…だ…。

 ……あれ?

 ……君、だれ?

(…機械部分ガ感電シタノカ。苦シカロウ)

 ……ナニ?

(…今、楽ニシテヤル。安心シテ眠ルガイイ)

 ……。

(サラバダ…!グ、グワッ!)

 ……?

(貴様!ナゼマダ動ケル!)

(過負荷で飛んだラインを直結しました。短時間ならこれでも戦えます)

(ソレデハ貴様ガ崩壊……ナルホド、ソウイウ事、カ)

(…えぇ)

 ……芹緒?

(明仁さんに手だしする以上、貴女を破壊しないわけにはいきません…すみませんが破壊させていただきました)

(…好キニスルガイイ。マサカ、こあもーたーヲソノ身体デ握リツブセルトハ…盲点…デ…アッタ)

 ……。


[ メニューに戻る トップ ]


あなたは?


PLZ 選んでください(未選択だとエラー)







-+-