[目次][進む]

ミンカとソノミ

「悪いけど、君の身体強化は勧められないな。女の子だしこれから母胎の成育をする時期だからね。こういう微妙な時期に強化を施すというのは」
「……へ?」
 白い診察室の中で、シャツ姿の少年は医師の言葉に首をかしげた。
「先生?あの……おっしゃる意味がよくわからないんですが」
「うむ、簡単にいうとだね」
 医師の姿をした男は優しい目で微笑んだ。
「君は女の子なんだよ、ミンカ君」
「はい?……あの、僕は男なんですけど」
「それは外見上だけの話。君の身体はれっきとした女の子なんだよ?
 遺伝子異常が認められない、ということはお母さんのお腹の中にいた時に何かがあったのかもしれないね」
「はぁ……母は僕がお腹の中にいた時に病気したそうですけど……って先生、どういう事ですかそれ!?」
「いや、だからね」
 医師はちょっとだけ困った顔で繰り返した。
「君は女の子なんだ。そして今は女の子としての身体にはとても大切な時期なんだよ?子宮の発達もまだこれからだしね。
 がっかりさせて悪いけど、遺伝子異常もない健全な女の子に身体強化術は法律違反になる。やめておいたほうがいいと思うよ?」
「……」
 少年の目は点になった。
 
 ミンカ・マドゥル・アルカイン・ヒルマ。アルカイン人、10歳。
 どこにでもいるはずの男の子が突然に出くわした、あまりに驚天動地なできごとのはじまりだった。



感想メールフォーム


PLZ 選んでください(未選択だとエラー)







-+-