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Ω-オメガ-

 天空に轟く巨大文明すらも、ただの一夜で灰燼と化すという。
 遠い日に戦いがあった。それは星の海を跨ぎ、ふたつの星間国家を文字どおり壊滅に導く大惨事をもたらした。彼らの使用した『時空破壊砲』は反物質の力を源泉に対象物の時系列質量を刹那に凝縮する。ティースプーン一杯に太陽ひとつぶんの質量を押し込んださまを想像してほしい。それはもはや物質としてこの世界に存在を許されない。自らの質量で空間自体すらねじ曲げ、無数の事象地平の果て、時空連続体の彼方に転落してしまうのである。
 結果、ふたつの国はそれぞれ直径数百光年の空間を道連れに、跡形もなく消滅した。
 しかも戦争はそれで終わらなかった。衛星宇宙や他の島宇宙にいて難を逃れた者たちがその後も戦いを繰り広げた。時空破壊砲クラスの物こそ使われなかったが天体をも砕く破壊兵器が無数に使われた。戦いは千年以上に及び、おびただしい生命がそこで失われた。
 今を遡ること数万年の昔のことであった。
 この物語は、そんな泥沼の戦いを経験した『兵器』が関わった、もうひとつの戦いの物語である。



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