今より1オクターヴ高い歌声を手にするには?

 とりあえず第一版。少しずつ改訂していくと思います。

序章
現代商業ポップスは高音ばかり?
だが歌えないことはない。
…さて。(何事もなかったかのように)
基本ロジック
詳細
アプローチ
注意事項四点
裏声を出す
裏声で音階を
ひとりカラオケにいこう
裏声で低音を出す
裏声でどんどん歌う(永遠に実施中)
スランプと戦う
地声との中間点を攻める(途中)
できあがった声を安定させる(予定)

序章

現代商業ポップスは高音ばかり?

 あなたがもし歌う事の好きな方なら 「最近の歌はみんな声が高い」 とお嘆きではないだろうか?

 確かに今の時代、歌というと高い声のものが氾濫している。いやそれどころか、低音の楽曲なんて顧みられるどころか存在すら忘れられかけている。何しろ、ささきいさおのような低音系歌手の録音を持ち出すと「軍歌?」とか言い出すゆとりまでいるほどなのだ。

 この意味おわかりだろうか?これはつまり「低音の楽曲自体が一般人に忘れられつつある」という事を意味している。

 昔は若い歌手に混じって必ず渋い声を響かせる実力派の歌手がいたものだが、今やそんな歌手が残っているのは声楽とアニソンの世界くらい。ましてや日本の商業ポップスの世界にはトンと居なくなってしまった。まぁ早い話、衰退の極みに達しつつある今の日本の商業ポップスではおっさんなんて扱いきれなくて、適当に使い潰せて子供を惹きつける女の子の方が金になるって事なんだろうが、なんともお寒い話だ。(いや、正しくは「おっさん」は皆無ではない。だがTV関係は彼らの存在を歌い手としては無視しているようだし、彼らアダルトな男性歌手ですら低音を売り物にしている者はほとんどいない。それがお金儲けの結果なのか他の大人の事情があるのかはわからないが)

 もちろんアマチュアやネットの世界はもちろんこの限りではない。ないが、マスコミはネットやアマチュアなど一切ガン無視するものだし、ネット楽曲もやはり高音の楽曲率が高い。いやむしろ、特に初音ミクなどのデジタル音楽ツールを用いたものの中には、そもそも人間の歌い手の範疇ではほとんど歌えないようなものもある。もとよりそれは機械音源なのだから使い手の好きにすればいいわけで、確かにそれは間違っていない。

 では、これらの歌は私たちには歌えないのだろうか?

だが歌えないことはない。

 結論から言うと、それはそう難しくはない。

 私hachikunが2011年11月7日までにまとめた現状で言えば、その答えは「すべてとは言えないが、喉をきちんと鍛えればある程度は歌えるようになる」となる。 これは単に理屈をこね回したものでなく、私自身が2010年5月から続けている長期実証実験の結果である。 いわば一種の人体実験であるが、まぎれもない実体験のサンプルである。

 私自身は素晴らしい歌唱力も何もない。正直、聞くに耐えるものは生み出せないだろう。だがこのデータを世に問う事により、ひとりでも歌い手が増えてくれる事を期待したい。

 なに?信じられない?

 では、下手くそで申し訳ないがサンプルを貼りつけておこう。なおここにあるのはリンクだけで、曲本体はニコニコ動画にある。

地声

 自分ではよくわからないけど、テノールくらいですかね?

訓練中の声

 うちの母いわく「メゾアルトくらいじゃね?」だそうで。ふむ。

…さて。(何事もなかったかのように)

 本稿では具体的に何をやっているか(過去形でなく現在も続けている)、どういうメカニズムなのかについて書いていきたい。

 人間の喉というのは多彩な表現を可能とするが限界も低い。すなわち大音量は出ない(無理に出せば壊れる)し、音域は結構広いがそれでもやはり限界がある。特に高音域に弱く、高い声を無理やり出そうとすれば、防御機構が働いて裏返る(いわゆる裏声)か、または痛めてしまう。デリケートなものなのである。

 だが、それは裏をかけば限界突破が可能。その最も顕著な例が、実は高音なのである。

 男性の場合はもちろん、女性の場合も思春期に声変わりが起きるわけで、ここでトーンが下がり声質が変化する。ここを何とかすればいいわけだ。さすがに大人の声を子供の声に戻すのは容易なことではないだろうが、トーンを上げる事は(原理的には)実は難しくない。 声帯が成熟し、大きくなった事によりトーンが下がったのだから、逆に少し締めこんでやれば(原理的には)以前の高さをエミュレートできるはずである。

 以上の根拠により実際にやってみよう、というのが元々の実験の趣旨である。

 本稿ではこの実績に基づき、私の得られたデータ、そしてそこから導きだされた仮説を紹介する。

基本ロジック

 序章で述べたように人間の喉の限界は低い。「普通に」発声する限り成人男女の出せる声にはそれぞれ限度があり、その枠はせいぜい2オクターヴくらい。ちゃんと歌で実用になる粋というと、さらに狭くなる。そこをどう乗り越え高音を出すかというと、 ミドルボイスを駆使する事でこれを解決する というのが基本となる。

 ミドルボイス。これは簡単に言うと「微妙にうわずった声」である。

 普段は普通の声なのに緊張するとアニメ声みたいになってしまう女の子。甲高いあのギョエーという声が特徴的なサカナクン。果ては「どこから声出してんだ」というあの黄色い歓声やサイレンのような悲鳴。あれらはすべて、無意識に緊張や習慣やらで喉を少し締め込んでしまい、これにより甲高い声が飛び出している。これがいわゆるミドルボイスの原理である。発声的に言うと地声に裏声が混ざり込んだものだと思えばよくて、それゆえにミックスボイスという人もいるが、あちこちで散見する限りミドルボイスという表現をよく見かけるので、本稿でもこちらを採用している。

 これらは技術的にはロジックが判明しているものである。つまり、あの声をちゃんと学習と訓練により制御できれば、甲高いあの声を意図的に使う事ができるという事になる。まぁ元々の声帯の音質があるので全く同じ声が出るわけではないが、成人の男性や女性なら、声変わりする前の声に近いものが得られると思うし、これだけでも男性では黙って半オクターヴ、女性でもある程度の領域の開拓ができる。

 では次に、実際の練習の経過をフェイズごとに述べていく。なお本実験は現在も進行中である。

詳細

アプローチ

 では、具体的にミドルボイスを使う方法について述べてみる。これらはテキストやネットの資料でなく、あくまで私自身の人体実験により導きだしたものである。

 ひとくちにミドルボイスを使えといっても、出し方もわからないし喉も鍛えられてないから普通のひとは無理である。たまに天然でこれをこなす人もいる(また女性の何割かは知らずにミドルボイスを使っているそうだ)が、本稿はあくまで私の実験を元にしているのでこのケースには触れない。

 では、まったくの素人がミドルボイスにアクセスするにはどうするか?以下の2つのアプローチがある。

 ミドルボイスとは文字通り中間音域である。なんの中間かというと地声と裏声(ファルセット)の中間なわけで、当然ながら地声だけ鍛えても制御はできず、裏声の制御ができなくてはならない。だが普通の人は日常生活で裏声を使っていないので全く鍛えられておらず、ゆえに最優先でやるべきは裏声となる。まず裏声の鍛錬を行い、そこから模索していく。

 なお、もうひとつの道として実際にミドルボイス系の声を使う歌手の物真似をする道もある。ただ本稿ではこれをおすすめしない。なぜなら、私がその手法を採用しなかったという事もあるのだけど、結局両方とも同じような事を微妙に違うアプローチで進めているにすぎないからだ。また、確かに単刀直入なカリキュラムが組めるかもしれないが、それはもっと喉の柔軟な若年の時代、できれば声変わり前後からやるべきものだと思う。私は既に40代にさしかかっていた事からこちらの手段は採用しなかった。

注意事項四点

ICレコーダーの購入を強くお勧めします

  自分の声っていうのは正しく聞こえないので、一度録音して聞き返さなくてはなりません。とても不快な思いをすると思いますが、いつでも使える録音機材は必須なので、パソコンで代用せずに早いうちにレコーダーを買ってください。

練習場所を確保しましょう

 通勤中の車の中、ツーリング中のバイクの上、カラオケボックスでもなんでもいい、とにかく「まわりを気にせず声を出せる場所」を探してください。思いっきり声を出せる場所がないと鍛錬に時間がかかるばかりか、口先の歌真似などに終始して喉の鍛錬が歪められてしまうかもしれません。

力を抜いてください

 以下全ての訓練の時に言える事ですが 「体から力を抜く」事を心がけてください。 特に喉が緊張していたら速攻で声が出なくなったりします。「そんなリラックスしたら声量が出ない」いや、それでいいんです。今必要なのは大声を出す事ではない。そういう心配は、ちゃんと声が出るようになってからでいいと思います。喉はデリケートなもの。一度潰せとか石器時代の世迷言をほざくボイトレ本を持っていたらただちに捨ててください。それはあなたの目的には有害です。

 慣れないうちは常に、喉に力が入っていないかを気にしてください。徹底すると初期にはマイクすら持てないかもしれませんが、それで正解です。そのままどんどんすすめてください。

気長にやってください

 繰り返しますが、とても時間がかかります。喉をきっちり鍛えていく事になるので、楽器ひとつの習得に匹敵するでしょう。気負わず焦らず、しかし毎日少しずつ進めていく事を強くお勧めします。

 では以下、いよいよ実際の訓練です。

裏声を出す

 裏声を出した事がないなら、まずここから。私は元々出すだけなら出せたので、ここはちょっとわかりません。物真似でも一発芸でもなんでもいい、出し方をとにかく覚えてみてください。

裏声で音階を

 声楽経験者でもなければ、裏声だけできちんと歌った経験はまずないはずです。また、歌おうとしてもドレミファも出ないはずです。裏声で音階制御するのは個人的には金管楽器のマウスピースの制御と同等以上でした。ドレミが出るのに一ヶ月近くかかり、しかも安定させるにはまだまだ時間が必要でした。

 実を言うと 最初の山がこの時期 です。なかなか綺麗な音にならず、なっても、特に男性の場合はまず確実にキモいオカマ声。うっかり録音して聞き返そうもんなら「うげぇ」となるのは間違いない。保証してもいい、ほとんどの人はここで挫折するはずです。

 しかもこれは、次のフェイズに比べれば……いや、大差ないかな?

 ドレミが何とか出るようになったら、ボイトレの本などを参考にしてみるのもおすすめです。たとえば以下。

 この本の全てを見る必要はないが、裏声の使い方のところや「声量は考えずとにかく力を抜け」などの指示はとても参考になります。本当にいい本です。

ひとりカラオケにいこう

 ドレミがとりあえず出るようになったら、使えそうな課題曲をいろいろ物色して覚えます。好きなものでかまいませんが、歌いやすさ優先に古い歌や未知のものから物色するのもいい。女性ボーカルのものがいいですが、 たぶん成人女性ボーカルの声は低すぎて歌いにくいでしょう。 この時期のおすすめは男性の曲を1オクターヴあげて歌う事です。そして、最初の目標ができるのもたぶんこの頃。

 ある程度数が揃ってきたら、ひとカラ、つまりひとりカラオケに行きましょう。大きな町の、しかも昼飯時とか一般人があまり入らない時間帯には黙々と練習している単独利用の客はしばしばいるので怖くもないでしょう。また、度胸がつくのでリラックスもしやすくなります。

 ひとカラは毎週通うのがおすすめです。二時間+喉休めの冷たいお茶ひとつ、もちろん店によりますが推定千円ちょっとですむ事もある(平日ならもっと安くも…)。もっと長くできるならそれでもいいいですが、録音しといて後で聞き返すのが基本なので、長すぎると後で聞き返すのがしんどいです。2時間でも30曲弱は歌えますし、慣れるまではおすすめしません。

 録音は必ずしてください。そしてパソコンか何かに保存し、歌った曲目をエクセルに記録して寸評もつけておいたりするのがお勧めです。 こういう訓練は成長がわかりにくく、数ヶ月過去を見返すと実感できたりするから 後から見返せるようにしておくべきです。ニコ動やyoutubeにこっそりアップしておくのもいいです。女の子が顔出しでもしてない限り何もタグのない底辺動画なんて普通のひとは見ないので、白地の歌のタイトルと日付だけ、みたいなのでアップしておくといいでしょう。

裏声で低音を出す

 カラオケの項目で述べたように当初、成人女性ボーカルの曲は低すぎて歌いにくいはずです。なぜかというと、裏声はその構造上高い声に向いているからです。

 え?「高い声を出したいんだからちょうどいいじゃないか」って?いえ、それは違います。確かにそれは正しいのですが、しかし間違いなのです。なぜなら、裏声をそのまま鍛えても綺麗な声になりますが、どうにもぺらぺらで芯のない声なんです。これではちょっと使えません。

 ですので、 不思議かもしれませんが「高音を鍛えるために低音の練習をする」のです。 いい木を育てるために土づくりをするようなものだと思って、女性の低音の曲をあれこれやってみてください。

 人体とは面白いもので、がんばって裏声で低音を出し続けていると、ちゃんと応援が入るようになってくるようです。具体的には、地声の一部が何とかチャンネルをあわせてきて、声を補完してくれようとします。すると不思議なことに、声が下がるのでなく少し張りが出ます。高い声は高い声のままに通りがちょっと良くなり、制御もしやすくなります。最終的には、演歌のこぶしを綺麗に回せたり、アタックの激しい歌を歌ったりという事ができるようになり、音質もむしろ少年ぽいものに向かって変貌していきます。

 また、この訓練の終盤には、自室などで歌う事にも抵抗がなくなってきます。あなた自身が慣れてきたのもあるんですが、音質的にも中性的でこそあれオカマ全開ではなくなってしまうからです。

裏声でどんどん歌う(永遠に実施中)

 前項までの訓練は当面続ける事になりますが、数ヶ月もやっていると歌うのが苦行でなくなってきます。

 元々歌の好きなあなたなら、むしろ今まで不可能だった高音の歌が実際に歌えるようになり、楽しくなってくるでしょう。そして歌いこめば歌い込むほどに喉も鍛えられ、発声も楽になり、そして何より自然になってきます。急速に「もうひとつの音声」として駆使できるように変貌していきます。いわゆる開花フェイズです。

 一旦声が出来上がれば用途は無限。別に人前で披露しなくても多重録音でバッキングコーラスに使ってもいいし、もちろんお気に入りの曲にあわせて鍛え上げ、飲み会で披露するという王道もアリです。まぁ飲み会で披露する場合は、あくまでモノマネの延長のように茶化した演出にするべきとは思いますが。シリアスに上手すぎると別の疑惑が……いやいや(汗

 ちなみにこの頃になると、もうこんなとこの文を読む必要はないとも思います。それぞれに目指したい極点が視野に入り始めている頃でしょうし、あとは基本に留意しつつ、好きな歌を好きに歌い続ければいいと思います。

 少年声でなく、いわゆる女声(おんなごえ)を目指す男性の方はここで専門の声づくりにとりかかる必要があると思います。この頃になると喉がかなり安定してきて、今まで不可能だった元気系や絶叫系なども訓練次第で歌えるようになってきますので、いよいよ本格的な声づくりも可能になってくるというわけです。

 とりあえず、女声狙いの人にはこの本がお勧めかもしれません。私は女声狙いではありませんが、初期に参考にしたのは全て女声使い、あるいはMtFの方のデータだった関係でこのあたりの本はいくつか読みました。なかなか興味深いです。

 これは本来、女装子(じょそうこ)のための本であってボイトレの本ではないんですが、前半を歌唱について割かれています。先のボイトレの本ほど具体的ではないのですが、キャラ付けなどの参考になると単純に読み物として面白いと思います。……本棚にあるのを家族にみつけられて変な疑惑が立たない限りはおすすめです XD

スランプと戦う

 とある女声の有名人は挫折について尋ねられて「毎日挫折しています」と答えていました。私もだいたい同意します。なかなか伸びを感じなかったりすると「これで本当に正しいんだろうか」と悩んだものです。何しろ「これだ!」っていう教本にもなかなか出会えなかったし。

 ちなみにこういう時の戦い方はいろいろありますが、個人的には「あえて気にせず遊ぶ」事をおすすめします。ボイトレは肩肘はってやる事じゃありません。それやると喉が緊張してパーになってしまうので、そういう日はむしろ「練習」を切り上げて現状やれる事で遊んでしまえばいいんだと思います。

地声との中間点を攻める(途中)

 これは私も現在進行形です。

 地声で歌うには高音部が高すぎるが、全て裏だと低音部がきつい…。こんな歌があると思います。私ならミク曲の『カンタレラ』でしょうか。地声だとサビがたたず、裏だと前半がパワフルに歌えない。

 しかしこの手の歌はある意味よい題材です。どの地点で切り替えるかというのもそうなんですが、「いかに切り替えずに歌うか」という工夫と鍛錬の見せ所でもあるからです。うまくいけば大きな力になるだろうと考えています。

できあがった声を安定させる(予定)

(執筆中)