タッチパネル式PCは本当に未来なのか?

Windows8からタッチパネル式がPCにほぼ標準となった。

実をいうと業界ではすでにこの未来に備えていた。MacにもLounchPadという仕組みがあるし、フリーOSのLinuxたちですらタッチパネル前提のGUIがすでに標準インストールされるものが多い。いつでも「ばっちこーい」になりつつある。

だが当然、タッチパネルには以下の問題がある。

モニターの使い方が大きく変化する

PC歴の長い人なら当然ご存知のように、我々はモニターから少し離れて使うようにしてきた。マウス利用もそうなのだが、大型モニター&大解像度でたくさんの情報を表示するとはそういう事だ。大きく見たいときは拡大して細部をチェック、そうでない時は全体を少し離れて俯瞰(ふかん)するわけだ。

だがタッチパネル前提だと、この前提は大きく崩れてしまう。

ぶっちゃけた話、27インチワイドのタッチパネル操作をデスクトップでしたいか?答えは否である。手で直接触るという事はそれだけ近くにいるという事だが、近すぎると端から端まで見るのが大変だって事を忘れちゃいけない。

これはコンテンツ関係の方ならすぐわかると思うが、大スクリーンを近い目線で見ると、当然だが目線を大きく動かさないと全体が見渡せない。人間の目というのは実はかなり忙しく動いているもので、これは思わぬ負荷の原因となってしまうだろう。

たとえば、油絵などを描く事を考えてほしい。描き手とイーゼルの間、あるいは絵のサイズには快適操作できる範囲が当然あるはずだ。ましてや指や短いタッチペンで操作しようというのだから、その範囲はさらにシビアになりかねない。

このへんを考えても、今までのモニターのように使うわけにはいかないのだ。

タッチパネルの利点

だが、タッチパネルはおそらく必須だろう。理由は以下だ。

対象物を直接操作できる

これは誰しもわかるところだろう。ボタンを押す、倒すなどの単純な操作に置き換えるのもそうだし、写真に手書きで一言添えるなど、大変わかりやすい。

マウスでポインターをあわせて、というのは実は直感的とはいえない。キーボード時代に比べると確かに劇的な相違だったのだけど、ポインターデバイス自体がそもそも非タッチなモニターとの組み合わせ前提で生まれた事を思い出してほしい。

ただしもちろん、前述のモニターの立ち位置の問題もある。それにタッチパネルではマウスのように細かい操作を表現できないのも事実。インターフェイスには改善の余地が山ほどあり、一朝一夕に置き換えは無理だろう。

お手頃サイズの画面が基本になる

バブル世代じゃあるまいし、巨大な画面が必要なのはむしろ特殊用途になるになると思う。たとえば開発系で少しでも多くの情報が出てほしい人、または事務屋さんでスプレッドシートをがばっとワイドに広げて使いたい等。

逆にいうと、それ以外の一般人は書籍サイズ程度がいいって事になると思う。つまり現在のタブレットサイズか、それに毛が生えた程度。

それでも大画面がほしいむきには、専用モニターでなくTVとつなぐ事になるだろう。ただNHKの問題があるので、TVベースで放送受信機能を排除した安価なモニターが出るのではと推測する。

キーボードを省略できる

今も昔もMacを買うとキーボードは別売りである。この事の是非をというと個人的には非であるが(少なくとも「自宅にひとつもキーボードがない方は買ってください」と但し書きするべきである)、タッチパネル操作をOSの基本GUIに組み込みタッチパネルモニターが標準ならば、もはやキーボードもマウスも必須ではなくなる。

この事は決して小さくないと思う。

キーボードは大量のテキスト入力には欠かせないアイテムだ。将来的にはわからないが、現時点(2013年暮れ時点)で、純粋にテキストでメガ単位の小説を書き上げるのにタッチパネルをベストと推奨する人がいたら世迷い言を抜かすなと私は言います。そういう人もこの世には存在するのかもしれないが、間違いなくニッチの世界ですので。

しかし逆にいうと、そんな長文テキストを扱いたい人以外はソフトウェアキーボードでもいいのではないか、という事です。

もっともこの話は「電車の中でノートパソコンを使う人」や、いわゆるノマドワーカーの事情を含んでいません。本当に膝の上でコンピュータを使いたい人にとってクラムシェル型がまだまだ必須という事であれば、これはもちろん物理キーボードがないとまずいでしょう。僕はそのシチュエーションには合致しないので、難しいところです。