ケモノ、FurryあるいはTherionと呼ばれる世界

ケモノ属性、あるいはFurry、Therion、色々言われる世界がある。

「よくわからない」という向きには、有名な鳥羽僧正の『鳥獣戯画』を想像されるといい。ああいった『獣人』もケモノ趣味の一種であると言えばご理解いただけるであろうか。ああいうものやディズニーの動物アニメ、あるいは手塚治虫などがよく引き合いに出されるが、あくまでそれらはひとつの例。要するに「動物の姿をした、あるいは半獣の姿をした人間、あるいは逆に人間要素の混じった動物」が好きな連中と考えれば、多少の誤解が混じるが「概ね」真実に近いだろう。

 なお我々は人間であるから、やはり本物の獣に近づくほどマニアックになっていくのは必然である。あとそれから、当たり前だがいわゆる獣姦趣味とは別ものなので分けて考えていただきたい。

さて、簡単な解説が欲しいと思ったので作ってみた。といってもネットに出回っている絵を拾ってきて、それを元に解説するだけである。内容の保全という意味からローカルに一度保存した画像を解説に使うが、それらの画像には全て引用元リンクをつけておくので、できる限り先方のサイトを見てあげてほしい。

ではいってみよう。

容姿や構造による分類

ケモノ度(1)

 五段階で描かれているが、なかなかわかりやすい。個人的には2〜5かな。

 なお、1を見て「ネコミミと尻尾飾りをつけた女の子」を想像する人がいたらそれは間違い。付け耳や尻尾はただのコスプレにすぎない。1の耳と尻尾は生来のものでコスプレではない。

 次。もう少し細かい分類になってくる。 (2)

 これはまた大変わかりやすい。ふたつとも作者のよくわからない絵なのだけど、心から賞賛の拍手を送らせていただきたい。

 1はただの人間である。2が先の絵の1に相当する。3、4がだいたい先の絵の2、3になり、5、6は先の絵ならば4。特徴的なのは7〜8で、先の絵の5はこちらの7よりも少し獣寄りであるが、8のように完全動物には至っていない。

 こちらの絵だと、個人的には 4〜7がお気に入りだろう。ちなみに8はつまり普通の動物なんだが、動物は好きだけど今ここで語るのは動物の好き好きではないので除外している。念のため。

 ちなみに「我輩は猫である」の猫は大好きだけど、あれはほとんど8である。彼はただの猫であり、一人称で擬人化しているものの対外的には7のような行動はせず8そのものだからである。

 言うまでもないが、どちらの絵も右に行くほど人間の属性を喪失していく。そしてそれは「上級者向け」も意味する。そりゃそうだ。普通の人は狐を可愛いと思っても、それに人間要素を混ぜて萌えてみたり、逆に自分が獣化しようだなんて考えませんから。 ^^;

ストーリー上の例外

 いくつかのストーリーで「漫画的表現」として耳や尻尾を描くことがあるが、これはもちろん実際に耳や尻尾があるわけではないので論外。強いていえば1。

 あと、ヒューマノイドタイプの異星人で、地球人のように尻尾が退化しきっておらず小さな尻尾が残る描写をしているSF作品があるが、もちろんこれは「ケモノ」ではない。単に「尾のある人間」である。漫画『ドラゴンボール』のサイヤ人、『マップス』における惑星ドドー人などなど。彼らは単に尾の退化してない人間であり、ケモノというわけではない。

精神面の分類

 獣趣味には精神的側面もある。まず鳥獣戯画よろしく「獣の姿をしている人間」が趣味の場合と、「ひとの属性をもつ獣」が趣味の場合で全く別種の存在であるし、趣向の面でも「ケモノを愛でたいのか、自分がケモノ化したいのか」という根源的な違いがある。そして、多くの世界観や性癖がそうであるように、こうした基本要素が違うと相容れない。それはそうだ。犬好きの人と、犬化したい人を同列に扱うことは不可能だし、わかりあえる事もないだろう。共通点があるとすれば同じ絵柄が気に入る可能性くらいだが、赤道上のものを南極と海溝の底からそれぞれ見るようなものだ。チェンバロとピアノよりも接点は少ない。

海外では

 日本のケモノ趣味が『Kemono』の名でこれまた輸出されちまっているが、それ以外にも元々海外には獣化(Therion)や擬人化(Furry)の概念やコミュニティがあるようだ。

 まず、日本では一般的ではないが海外ではディズニー的な擬人化趣味をFurryと呼び、実際にケモノの扮装をしてパーティを開くような者たちもいる。彼らがどのくらいの勢力を持っているかというと、キリスト教団体から危険思想として迫害を受けるほどであるという。という事は、たぶん日本のコスプレ程度以上の力はあるんだろうな。また精神的医学面での議論も時折なされるが、もっと獣属性に近いTherionに至っては、人語を話さず四足歩行するなど、限りなく獣に近い状態を「実践する」グループもあるようだ。ただし、これらは悪魔つきなどと誤解される可能性もあるため地下で行われるようで実態はよくわかっていない。

 いわゆる獣人化(ゾアントロピー)などは精神医学などの解釈もあるためか、特に完全な獣人でなく前の絵の1、後の絵の2程度の扮装をするコミュニティの中には大変学識レベルの高い集まりもしばしば存在するらしい。伝聞であるが、ネット上のコミュニティで、公用語としてラテン語を採用している集団の存在が確認されているらしい。