それは、とある惑星の一角。 灼熱の大気に包まれたその星は、まさに死の星だった。 摂氏で500度をはるかに超える熱風が常時吹き荒れるため海も川もなく、さらに大量の二酸化炭素も熱を蓄えていた。 だが、そんな環境にあっても過去には文明があったのか、何やら人工物の残骸のようなものもみられる。 それらの中には熱で溶解したと思われるものもあり、かつてのこの星はここまで熱くなかったことがうかがえる。 銀河でいうところのソル太陽系の第三惑星。 現地住民のいうところの太陽系第三惑星『地球』。 そう。 この死の世界はまさしく地球の、現時点での姿なのだった。 ■ ■ ■ ■ どうしてこうなってしまったのか? まずは直接の原因だけを述べていこう。 やらかした実行犯であるが、これは銀河連邦が雇った掃除屋と呼ばれる業者が原因なのがわかっている。 連邦は彼らを使い、地球におけるオン・ゲストロ──ミリアの所属元である神聖ボルダの参加している陣営である──の支部を叩くつもりだった。 彼らは軍隊ではないし、連邦の軍隊を動かさずにやれば、あとは死人に口なし。 口うるさい彼らの元お姫様も今は遠くの宙域いるので、バレないだろうと考えたようだ。 だが地球圏に現れた彼らは、連邦の担当官が出したのと違う指示書を持っていた。 そこに書かれていたのは『惑星表面のクリーニング』。 地球をとりまく現状を知らない彼らは、その注文通りの仕事をした。 つまり。 手頃な小惑星をもってきて墜落させ、莫大な熱エネルギーを生み出した。 その熱は大気の流動によって全世界に広がり、地球上の生命体のほとんどを焼き尽くした。 海も煮えたぎり、どんどん蒸発して消えてしまった。 そして地球は死の世界となったのである。 ちなみに生存者はゼロではなかった。わずかに存在した。 まず、有人の人工衛星で作業中だった数名。 彼らは当然だが帰還不可能で、ただ死を待つのみであった。 人道優先でオン・ゲストロの救助隊が通信を試み、結果として救助が行われた。 自殺者も出たが、結果として合計六名がオン・ゲストロに身を寄せた。 あとは、なんと日本の某諸島区域から、アマルー式の救難信号が上がっているのが受信された。 連邦軍がオン・ゲストロの軍事施設として攻撃しようとしたが、先にオン・ゲストロのエージェントが通信成功。 なんと、アマルー族の女性が一名に、12名の日本の小学生たちだった。 女性は小型艇の故障で現地に不時着、地球人に保護されていた。 ただの文民(学校の先生)であることから人道優先で現地の地球人は当局に通報せず、そのまま自動修復が終わるまでという名目で、現地の小学校で臨時教員をしていたとのことだった。今回の異変に気付いたが時遅く、たまたま船に遊びにきていた子供たちは保護したが大人たちは全員死亡したという。 アマルー女性は末席ながらアマルー王家の者ということで、オン・ゲストロ経由でアマルー本星に連絡。 先日迎えがきて、12名の子供たちと共にアマルー領へ旅立った。
エムネア・パルティ・アマルーが自動修復中の船の確認をしたのは、ほんの奇跡的な偶然のためだった。 教え子たちが船を見たがったのだ。 最近では珍しいことで。 その意味もわかっていたけど、子供たちの気持ちがうれしくて、それでつい、張り切ってしまったのだった。 ■ ■ ■ ■ そもそも、アマルー族の彼女がどうして日本の子供たちを教えていたのか。 アマルー本星でも幼年学校のライセンスを持っている彼女だけど、あたりまえだが日本の教員免許は持っていない。 実をいえば、彼女の乗っていた船が落ちてしまったからだ。 勤め先をクビになり、心の癒しにと訪れた、噂にきく聖女様の故郷という事以外まったく知らない星。 しかもどうやら『ゲンカイシュウラク』なる超田舎に落ちてしまったようだった。 しかし結果として、逆にそれが幸いした。 アルカとは全く違う猫の人アマルーの容姿も、ものすごく珍しがられただけ。なんと通報もされなかった。 へたに都会に出るのも危険ということで、自動修復で船が治るまで村でお世話になっていたのだけど。 ある日、村長なる老婆がやってきて、子供らに勉強を教えてやってくれと言われたのだ。 『いいんですか、わたし異星人なのに?』 『は、こんな限界集落じゃ医者も先生もきてくれんよ。 きけば教員免許はあるんじゃろ?』 『はい、アマルー本星で幼年クラスの資格をとりました。少しですが実地経験もあります』 『別に全部とはいわねえヨ。 今どきは通信なんたらで勉強なんてのもあっての、そっちで子供らを集める話が進んでおったのよ。 けどヨ、読み書きそろばんだけが教育じゃねえだろ? 初等教育くらいは直接、手とり足とり教えてやりたいじゃねえか。なぁ』 『そうですね、それはわたしも同意見です』 結局、彼女は教員を引き受けた。 といっても本来の勉強は通信で受けて彼女は添削、それから道徳や体育などか主体になったが。 しかしすぐに授業内容が増えた。 子供たちが目をキラキラさせて、宇宙や銀河文明のことをものすごく知りたがったからだ。
「せんせー、なにしてるの?」 「これはね、この宇宙船のほかにも船がないか調べるものなの。 時々こうやって、こわれてないか調べるのよ」 「……うんこーまえ、てんけん?」 「あら、よく知ってるねアヤカ」 「えへへぇ」 最年少の娘をほめながら、彼女は計器類のチェックをしていたのだけど。 「──あら?」 「どうしたの?」 「へんね、この近くに船がいるみたいなんだけど……なにこれ!?」 船舶種別を調べて、ギョッとした顔になった。 「破壊作業船?なんでこんな船が……え、連邦の船がいる?オン・ゲストロも?なにこれ!?」 何か、とてもやばいことが起きている。そんな予感に彼女は眉をつりあげた。 「アキラくんユウキくんちょっと!」
12人の子供たちと先生
・エムネア・パルティ・アマルー ・アヤカ 5歳 最年少。ショートカット。本来就学予定ではないが、一緒に教えている。 ・アキラ 12歳 最年長。 坊主頭。最年長でこっそりエムネアの手伝いもしている。 ・ユウキ 11歳 調髪 親に切ってもらった髪が恥ずかしいと思っている。 ・ユウジ 10歳 調髪 坊主頭 ・ユウタ 10歳 調髪 坊主頭
異星人の船の不時着。 エムネアがアマルー族、つまり猫頭人身の種族であることもあり、あの時はみんな興味しんしんだったものだ。 だけど、だんだん仲良くなってくるにつけ。 船の自動修復がすすみ、帰還可能になる日が近づくにつれ。 それが『臨時教員・エムネア』との別れの日だと知っている子供たちは船のことになると口を閉ざし、小さい子などは泣き出す者までいるありさまだったのだ。 懐いてくれるくれるのはうれしい。 見たこともない異星人だというのに、 日本の田舎の子供たちにとっては映画かアニメかという出来事なわけで、そりゃあ最初は子供たち 以前はよく船を見たがったのだけど、だんだんと仲良くなってくるにつけ、幼年の子たちを中心に船に近づこうとせず、エムネアが船に戻ろうとすると泣き出す子まで出だした。
「みんな、すぐ船の中へ!」 「先生?」 「いそいで!!間に合わない!!」 何やら空に巨大なものが見えて、子供たちが「なんだなんだ」と見上げていたその時。